研究課題
本研究は、膵β細胞保護におけるEpac2A/Rap1シグナルに焦点を当て、そのメカニズムの解明ならびに病態生理学的な役割の解明を目的としている。本年度は膵β細胞保護作用におけるEpac2A/Rap1シグナルの役割について解析を行った。1) 膵β細胞における活性酸素種(ROS)の測定:MIN6-K8細胞を用いてアロキサンにより産生された過酸化水素をホモバニリン酸法により測定する方法を確立した。また、ROS産生指示薬である蛍光色素を用いてパルミチン酸により産生されるROSを測定する方法も検討した。これらのROS測定法は細胞における酸化ストレスを評価する手段として有用である。2) Epac2欠損膵β細胞株の作製:CRISPR/Cas9システムを用いて、MIN6-K8細胞からEpac2欠損膵β細胞株の作製を行った。Epac2には、神経および神経内分泌、内分泌細胞などに発現するEpac2Aの他に、それぞれ主に副腎および肝臓に発現するEpac2BおよびEpac2Cが存在する。今回はEpac2AのノックアウトよるEpac2Bの代償的な発現増加を考慮して、Epac2Aのみ欠損する細胞株およびEpac2AとEpac2Bの両方を欠損する細胞株を作製した。全体で100以上のクローンをピックアップし、ゲノムDNAの変異解析の結果、最終的に約10程度の欠損株を得た。このような欠損株は、Epac2A/Rap1シグナルの細胞レベルでの解析に有用である。3) Rap1の下流因子の同定:MIN6-K8細胞にHis6ペプチドとFLAGペプチドで二重標識したRap1 (HisFLAG-Rap1)を発現させ、Epac選択的cAMPアナログ(8-CPT)で刺激後に細胞を回収してアフィニティ精製を行った。8-CPT刺激によりRap1に特異的に結合するタンパク質が明瞭に認められず、精製法の改良が必要と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ計画通りに遂行できているため。
1) パルミチン酸や過酸化水素等による酸化ストレスに対するcAMPシグナル活性化の効果およびEpac2A/Rap1シグナルの役割について検討する。また薬剤等刺激によるアポトーシスに対するcAMPおよびEPac2A/Rap1シグナルの役割も検討する。これらの検討は、前年度に作製したEpac2欠損膵β細胞株も用いて行う。さらに、今年度はRap1欠損膵β細胞株も同様の手法にて作製する。2) 膵β細胞保護作用に関与するRap1の下流因子の同定:前年度に引き続き、アフィニティ精製によるRap1結合分子の同定を行う。また、MIN6-K8細胞に薬剤等で酸化ストレスを誘発した状態でRap1に結合する因子を同定する。3) 薬剤誘発性糖尿病マウスや糖尿病モデル動物の膵臓組織における酸化ストレスの状態を検討する。また、Epac2A欠損マウスを用いて薬剤誘発性糖尿病または食事誘導性肥満マウスを作製し、膵β細胞機能障害および膵島の酸化ストレスの状態について検討する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件)
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