研究課題
本研究は、インスリン受容体以降の情報伝達障害によるインスリン抵抗症と考えられる症例の遺伝子解析及びiPS細胞を用いた機能解析である。発端者とその家族から得たDNAを用いてエクソーム解析を行った結果、PIK3R1遺伝子c.1945C>Tが原因遺伝子であることが明らかとなった。さらに、発端者からiPS細胞の樹立を行い、健常iPS細胞とともに、肝細胞に分化させて、インスリン作用の検討を行った。インスリン受容体の下流にあるAktについてインスリン添加によるリン酸化を解析したところ、健常iPS細胞由来肝細胞と比較して、疾患iPS細胞由来肝細胞ではインスリンによるAktリン酸化が抑制されていた。またインスリン添加によるG6PC(Glucose-6-phosphatase catalytic subunit)発現の減弱作用を比較したところ、疾患iPS細胞由来肝細胞の方がG6PC発現の減弱作用がより弱いという結果であった。以上よりこのPIK3R1変異ではインスリン作用が抑制されていることが示唆された。さらに、変異を修復することでこのインスリン作用の抑制作用がレスキューされることを検討するため、また、これまでの誘導において肝細胞の分化マーカーであるalbumin の発現量が患者iPS細胞由来肝細胞よりも健常者iPS細胞由来肝細胞の方で低くなるという傾向が認められており、細胞株によって分化誘導効率に違いがみられるという問題の解決のため、CRISPR/Cas9システムを用いてPIK3R1変異を修復する試みを行った。また、同じくインスリン感受性組織である骨格筋への分化誘導も行い、健常iPS細胞から誘導した骨格筋細胞において、インスリンによるAktのリン酸化が増強されることを明らかとした。
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J Diabetes Investig.
巻: 9 ページ: 1224-1227
doi: 10.1111/jdi.12825.