研究課題/領域番号 |
16K09751
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
艾尼 吾甫尓江 神戸大学, 医学研究科, 教育研究補佐員 (70750488)
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研究分担者 |
高橋 晴美 神戸大学, 医学研究科, 特命講師 (50546489)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 糖尿病 / グルタミン酸 / インクレチン / 膵島 / グルタミン酸トランスポーター / 安定同位体 / プロテオミクス / モデル動物 |
研究実績の概要 |
食後に腸管から分泌されるインクレチンはcAMPシグナルを介してグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進する。研究代表者らはグルコース代謝により産生されたグルタミン酸がインスリン顆粒内に取り込まれることがインクレチン/cAMPシグナルによるインスリン分泌に必須であることを明らかにした。しかしながら、インスリン顆粒内のグルタミン酸がどのようにしてインスリン分泌を促進するのか、そのメカニズムは依然として不明である。本研究は、網羅的プロテオミクスの手法により代表者らが樹立した小胞型グルタミン酸トランスポーターノックアウトβ細胞株を用いた解析により、膵β細胞のグルタミン酸シグナルによるインスリン分泌を増強する機構を明らかにし、その生理学的ならびに病態生理学的意義を解明するものである。 平成28年度は以下の3つの点を中心に検討を行った。(1) グルタミン酸シグナルの標的分子の同定とその役割の解明:安定同位体標識したアミノ酸を含む培地で培養した膵β細胞株MIN6から精製したインスリン顆粒画分を質量分析計で解析し、変化のあった多数のタンパク質を同定した。 (2) グルタミン酸トランスポーターのin vitroにおける生理学的役割の解明:研究代表者らが樹立したVGLUTのノックアウトβ細胞株を用いて、グルコース刺激やインクレチン刺激によるインスリン分泌について検討した。 (3) グルタミン酸シグナルの病態生理学的役割の解明: 当研究室で最近確立された肥満・糖尿病モデルラットや肥満モデルラットなどから単離した膵島を用いて、グルコース刺激やインクレチン刺激によるインスリン分泌を解析した。また、グルコースの安定同位体である[U-13C]-グルコースを用いたメタボローム解析によりグルタミン酸を含む代謝産物を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りに計画が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は以下の通り検討を行う。 (1)グルタミン酸シグナルの標的分子の同定とその役割の解明:平成28年度に引き続き、比較プロテオーム解析によるグルタミン酸シグナルの標的分子の同定を行う。同定された標的分子の候補となる分子のインクレチンによるインスリン分泌における生理学的役割を明らかにするため、siRNAによりノックダウンした細胞株あるいはゲノム編集により候補分子をノックアウトした細胞株を用いてインスリン分泌およびその動態を解析する。 (2)グルタミン酸トランスポーターのin vitroにおける生理学的役割の解明:平成28年度に引き続きVGLUT1、VGLUT2およびVGLUT3のノックアウトβ細胞株を用いて、グルコース刺激やインクレチン刺激によるインスリン分泌およびその動態を解析する。さらに、アデノウイルスベクター等を用いて野生型VGLUT(1または2)をノックアウト細胞株に発現することによりインスリン分泌障害が回復するかを検討し(レスキュー実験)、インクレチンによるインスリン分泌におけるVGLUTの生理学的な役割を明らかにする。 (3)グルタミン酸シグナルの病態生理学的役割の解明:平成28年度に引き続き、肥満・糖尿病モデルZFDMラット及び肥満モデルZFラットなどから単離した膵島を用いて、グルコース刺激やインクレチン刺激によるインスリン分泌と同時にメタボローム解析によりグルタミン酸を含む細胞内代謝物の含量について正常系統と比較検討する。さらに、細胞膜透過性グルタミン酸前駆体であるジメチルグルタミン酸の処置によるインスリン分泌増強について検討する。VGLUTの発現や(1)で同定された標的分子の発現についても平成28年度に引き続き検討する。
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