研究課題
レジスチンは、インスリン抵抗性惹起性サイトカインである。申請者らは、その遺伝子発現・血中濃度が転写調節領域の一塩基多型(SNP)-420の”遺伝子型効果”ならびに”DNAメチル化効果”によって強く規定されることを見出した。一方、環境因子はメチル化等のエピジェネティクスを介して遺伝子発現に影響しうる。本研究では、この独自の知見であるSNP-420の”dual effect”に焦点を絞り、SNP・環境因子・メチル化を統合したレジスチン遺伝子発現調節機構を解明する。具体的には、SNP-420の遺伝子型を決定し、メチル化を定量する。培養細胞を用いた環境因子液性mimeticsによる分子機構の解析、ヒトの単離単球を用いた生体内意義の解析、定量化環境因子データを用いた遺伝疫学解析を体系的に組み合わせる。こうして、2型糖尿病、動脈硬化等のインスリン抵抗性関連疾患の新たな発症予防・治療戦略を見出す。本年度は、日本人一般住民約2000名について、SNP-420のメチル化率定量をほぼ終了した。環境因子や検査結果も含めてデータベースを構築した。また、新たに検診に参加した一般住民について、環境因子・臨床検査情報と共に、保存血清とDNA抽出用のサンプルを収集した。本研究期間中に、一般住民2000名について、血中レジスチンと環境因子の関連を遺伝疫学的に解析した。食事から摂取する栄養素を食物摂取頻度調査票により推定した。その結果、摂取したn-3多価不飽和脂肪酸と血中レジスチンが負に関連した。この関連は、SNP-420の遺伝子型がG/G型の場合に最も強く、遺伝子・環境因子相互作用を認めた。また、血中レジスチンとSNP-420のメチル化率は負に関連した。THP-1ヒト単球細胞を用いて、EPAのレジスチンmRNAに及ぼす影響についても検討した。
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Clin Endocrinol
巻: 88 ページ: 51-57
doi: 10.1111/cen.13500.