研究課題/領域番号 |
16K09756
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
阿比留 教生 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (00380981)
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研究分担者 |
古林 正和 長崎大学, 保健・医療推進センター, 准教授 (00380874)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 1型糖尿病 / NODマウス / 転写因子 / T細胞代謝系 / IRF4 / 糖尿病 / 免疫学 / 応用動物 |
研究実績の概要 |
1型糖尿病では自己免疫疾患であり,現在,免疫学的寛容誘導を目的とした治療開発が進められている.IRF4は,多面的な免疫担当細胞の“パイオニア転写因子”であり,その分化・増殖の最上流に位置する転写因子であることが報告された.我々は,1型糖尿病モデル;NODマウスを用いて,このIRF4が,用量依存性に主要な免疫細胞機能を制御し,1型糖尿病の病態へ関与していることを証明した.IRF4を標的とした治療法探索システムの開発のために,我々が作製したIRF4 KO NODマウスを応用する場合,問題点として,①in vitroの系で,T細胞の抗原特異的な免疫反応を評価出来ない,②糖尿病発症をエンドポイントにした場合,in vivoの系で長期間を要する点があげられる.今回,その問題を解決するために,NOD由来膵島抗原特異的なCD4+T細胞を主に発現するBDC2.5-TCR-NODマウスを利用し,マウスの交配により,IRF4 KO-BDC-2.5 TCR NODマウスを作製し、さらに養子移入の系を用いてin vivoの系で迅速に膵島炎、糖尿病誘導能を評価するシステムを構築することを目的にした。 これまでに、BDC2.5-TCR-NODマウスと既に作成したIRF-4遺伝子ホモNOD欠損マウスと交配し、IRF4 ホモ欠損(Irf4-/-),ヘテロ欠損(Irf4+/-),野生型(Irf4+/+)BDC2.5-TCR-NODマウスを作製した。IRF4発現の異なるBDC2.5TCR NODマウス脾細胞からエフェクターT細胞を単離し、免疫不全(RAG1KO)NODマウスに養子移入を行い、in vivoでの膵島炎、糖尿病誘導能を確認をすすめている。また、IRF4発現の異なるBDC2.5TCR CD4T細胞に対する自己抗原刺激を行い、T細胞増殖反応、およびT細胞代謝系の変化と、IRF4発現の関連性を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに、IRF4欠損BDC2.5TCR NODマウスの作製を終了し、CD4+CD25-エフェクター細胞のRAG1KONODマウスへの養子移入による糖尿病誘導能について検討を行い、preliminaryではあるが、IRF発現の用量依存性の糖尿病誘導能を確認している。in vivoにて、IRF4発現と膵島炎、糖尿病誘導能の関連性が明らかとなれば、in vitroの系によるその確証実験を進めることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
① 養子移入実験:10週齢のIRF4 ホモ欠損(Irf4-/-),ヘテロ欠損(Irf4+/-),野生型(Irf4+/+)BDC2.5NODマウスの脾細胞からCD4+CD25-T細胞単離し,免疫不全(Rag1 KO)NODマウスの腹腔内に,養子移入を行う.recipientマウスの糖尿病発症モニタリング、膵島炎レベル確認のための組織学的検討を行う. ②T細胞増殖反応:Irf4-/-,Irf4+/-,Irf4+/+BDC2.5由来CD4+T細胞,およびRag1 KONODマウス由来樹状細胞(CD11c陽性)を単離し,in vitroの系で,非特異的刺激,およびBDC2.5に対する自己抗原刺激(RLGLWE-14)を加え,T細胞増殖能やサイトカイン発現を確認する。 ③T細胞代謝系反応:細胞外フラックスアナライザーを用いて、IRF4用量依存的に臨床表現型の異なるBDC2.5 CD4+T細胞群の、in vitro抗原刺激後のエネルギー代謝制御(ミトコンドリア呼吸系と解糖系のバランスについて)の相違について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に、in vivo実験と並行してin vitro実験を行う予定であったが、in vitroの実験の進展が遅れたため。計画として、今年度使用予定であったin vitroでのT細胞抗原刺激後の細胞外フラックスアナライザーの試薬などの費用を請求予定である。
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