研究課題/領域番号 |
16K09761
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
迫田 秀之 宮崎大学, 医学部, 講師 (50376464)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ペプチド / 肥満 |
研究実績の概要 |
末梢のエネルギー状況や摂食情報を消化管の自律神経が感知して中枢に情報を伝達している。高脂肪食摂取により惹起された腸管の炎症は、迷走神経を介して中枢に波及して、ペプチドによる摂食行動の調節機構に異常を生じ過食肥満を生じてくる。本申請では、グレリン抵抗性やレプチン抵抗性を生じる時期を特定して、その前後で迷走神経節における発現量やリン酸化、糖鎖修飾の変化する蛋白を同定する。候補蛋白の迷走神経や中枢における機能を解析し、炎症や摂食調節における役割を明らかにして、肥満や糖脂質代謝異常の病態を明らかにし、新しい診断法や薬剤開発に繋げていく。 60%高脂肪食をマウスに摂餌し、経時的にグレリンを投与して2時間の摂食量を測定したところ、高脂肪食摂取4週間後からは、グレリンによる摂食亢進作用が消失した。この時、マウス腸管、迷走神経節と視床下部で炎症が惹起される経過を観察した。高脂肪食摂取1日で惹起された炎症は、2週間で一旦改善し、4週間以降再び悪化した。摂食亢進ペプチドであるグレリンによる摂食亢進作用は、4週間以上の高脂肪食摂取で消失した。この時、迷走神経節と視床下部のグレリン受容体発現が低下しており、高脂肪食による慢性炎症の持続がグレリン受容体の発現量を減少させる可能性が示唆された。12週間の高脂肪食摂取による、腸管、迷走神経節と視床下部の炎症と、グレリン摂食亢進作用の消失は、カロリー制限による体重減少で可逆的に改善した。今後は、高脂肪食による腸管の炎症が神経に伝達する詳細な機序を解明していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高脂肪食をマウスに摂餌し、経時的にグレリンを投与して2時間の摂食量を測定したところ、高脂肪食摂取4週間後からは、グレリンによる摂食亢進作用が消失した。この時、マウス腸管、迷走神経節と視床下部で炎症が惹起される経過を観察して、高脂肪食摂取1日で惹起された炎症は、2週間で一旦改善し、4週間以降再び悪化した。摂食亢進ペプチドであるグレリンによる摂食亢進作用は、4週間以上の高脂肪食摂取で消失した。この時、迷走神経節と視床下部のグレリン受容体発現が低下し、その下流シグナルのERKやAMPKのリン酸化も低下していた。高脂肪食による迷走神経節の慢性炎症の持続がグレリン受容体の発現量を減少させる可能性が示唆された。12週間の高脂肪食摂取による、腸管、迷走神経節と視床下部の炎症と、グレリン摂食亢進作用の消失は、カロリー制限による体重減少で可逆的に改善した。以上のように、高脂肪食によるグレリン抵抗性の生じる時期の特定とその機序をある程度明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
db/dbマウスやob/obマウスなど遺伝的に肥満過食から糖尿病を発症するモデルマウスを用いて、腸管、迷走神経節、視床下部の炎症と摂食行動を測定する。高脂肪食以外で腸管に炎症を惹起した時の、迷走神経節や視床下部への炎症波及を調べる。また、摂食行動や摂食調節ペプチドやその受容体の発現量を測定する。逆に、メサラジンなどの薬物を投与して、腸管の炎症を抑制した時の摂食行動やエネルギー代謝を観察する。以上のように腸管、神経の炎症と摂食行動の関連を追及していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想より実験が速やかに進めることができて、予定していた個体数より少数の動物で実験成果をあげることができたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
昨年度は糖尿病・肥満モデル動物として高脂肪食負荷マウスを用いていたが、db/dbマウスやob/obマウスなど遺伝的に肥満過食から糖尿病を発症するモデルマウスを用いた研究を追加することを計画している。
|