研究課題
本研究では、亜鉛トランスポーターZIP13を介した亜鉛シグナル(ZIP13-亜鉛シグナル)による脂肪褐色化制御の分子機構を解明することを目的とし、肥満や糖尿病の理解に貢献することを目標とする。本年度はZIP13がベージュ脂肪細胞の分化に対して抑制的に作用することを明らかにした論文を公表した(Fukunaka A, et al., PLoS Genet. 2017)。しかしながら、なぜZIP13を欠損するとベージュ脂肪細胞が特異的に分化亢進(ベージュ化)するのか、その分子機序はまだ解明されていない。そこで、申請者が開発したベージュ脂肪細胞分化誘導系を用いて、ZIP13の脂肪細胞褐色化抑制に必要な領域を決定した。鳥類には、ベージュ脂肪細胞が存在しないことが知られているが、ZIP13は鳥類にも保存されている。マウスのベージュ脂肪細胞分化系を適用すると、ニワトリZIP13の亜鉛輸送能はマウスと同程度に保たれているものの、マウスZIP13のように脂肪細胞褐色化を抑制する機能は保存されていなかった。このことは、マウスZIP13は、亜鉛輸送以外に脂肪細胞褐色化に必要な領域を保持していることを示唆している。そこで、その領域を同定するため、ニワトリとマウスのキメラZIP13を作成することにより、脂肪細胞褐色化抑制に必要な領域を同定したところ、マウスZIP13の細胞質側に面した特徴的な長いループ構造が脂肪細胞褐色化抑制に必要十分であることが判明した。この領域はZIPファミリー間で保存性が低い領域であったため、この領域がZIP13-亜鉛シグナルの特異性を決定し、この領域に結合する分子が脂肪細胞褐色化抑制に重要ではないかと想定した。そこでZIP13のループ構造をbaitとして、yeast two hybrid(Y2H)を行い、結合する分子(結合分子)を3種類選定した。
2: おおむね順調に進展している
本年度はZIP13-亜鉛シグナルの脂肪細胞褐色化抑制に必要な領域を同定できた。また、その領域に結合する分子(標的分子)を3種類選定した。今後、選定してきた標的分子候補の脂肪細胞褐色化における役割を明らかにし、ZIP13-標的分子の脂肪細胞褐色化における役割を解明する。以上のように本年度は、ZIP13の標的分子の候補が得ることができたため、当初の計画通り進んでいると考えられる。
今後の方針として、Y2Hで選定できた3種類の標的分子候補が細胞内でZIP13と結合するか免疫沈降を行い確認する。結合が確認できた標的分子候補は、前駆脂肪細胞株で欠損あるいは過剰発現して、ベージュ化への影響を精査する。影響を与えた標的分子候補は、Zip13-KO細胞に過剰発現および欠損してその効果を検討し、ZIP13と同じ経路で働くものを探索し、ZIP13の直接の標的分子を同定する。さらに、ZIP13の標的分子との会合部位をY2Hや免疫沈降法により同定し、標的分子と結合できないZIP13の変異体でベージュ化の程度を観察することにより、ZIP13と標的分子の結合がベージュ化に果たす役割を明らかにする。
(理由)当初計画していた実験に関わる消耗品の購入に変更が生じたため。(使用計画)ZIP13の直接の標的分子が明らかにでき次第、ノックアウトマウスまたはトランスジェニックマウスを作製・解析費として使用予定である。
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