研究課題
本研究課題の目的は、Ppy遺伝子Creノックインマウスを用いたPP細胞の細胞系譜の追跡により、PP-β細胞間の分化転換機構を解明し、PP細胞が新たなβ細胞の起源となる可能性を実証することである。PP細胞の細胞系譜追跡を行なう目的で、Ppy promoter-CreノックインマウスとROSA26 promoter-EYFPを交配し、Ppy-Cre/+:ROSA26-EYFPマウスを作出した。我々が新たに独自に作製したPP特異的モノクローナル抗体を用いて12週令のPpy-Cre/+:ROSA26-EYFPマウスの膵島を解析したところ、膵頭部ではPP細胞の多くはGFPでラベルされた。また、膵尾部においては、PP陽性細胞であるにもかかわらず、GFPでラベルされない細胞も認められた。この原因は現在よく分からないが、膵尾部側ではPpy遺伝子の転写レベルが低く、Cre-LoxPのrecombinationを十分に誘導できないのかもしれない。また、興味深いことに、GFP陽性細胞の中にはPP陽性細胞に加えて、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン陽性細胞も認められた。今後、膵頭部と膵尾部に領域を分けて、Ppy発現細胞の細胞系譜を定量的に解析する予定としている。以上の観察から、PP細胞は、β細胞のみならず全ての内分泌細胞の起源として機能する可能性がある。また、我々が独自に作製したPPモノクローナル抗体は、マウスのみならずratやhumanの検体でもPPの検出が可能であり、非常に有用性の高い抗体であることが明らかとなった。本PP特異的抗体作製に関して論文を投稿予定である。今後、Ppy発現細胞が各内分泌細胞へと分化してゆくメカニズムを解明したい。その目的のためにPpy発現細胞にPdx1およびMafAを強制発現させたのちの、膵内分泌細胞のその後の細胞の運命を追跡する実験をすべく、マウスの交配を進めている。
2: おおむね順調に進展している
市販のPP抗体の特異性の問題点を明らかにし、PPに真に特異的なマウスモノクローナル抗体を作出することに成功した。この抗体はマウスのみならず、ratおよびヒトにおいても免疫組織染色が可能であることが判明し、今後PP細胞の研究を進めるのに有用性が高いと考えられる。昨年より研究を進めたところ、PP発現細胞からはβ細胞のみならずα細胞やδ細胞も分化することが判明し、膵内分泌細胞の分化過程のパスウェイに関するこれまでの仮説を書き換える成果が得られつつあると考えられる。
我々が開発した特異的PP抗体を用いて、膵臓の発生過程、とくに胎生膵におけるPPの発現パターンを詳細に検討する。とくに他の内分泌マーカーとの時空間的関係について検討し、PP発現細胞から他の内分泌細胞がどのように分化してゆくのかを明らかにしたい。また、新たにPpy-GFPノックインマウスを作製しており、これらの解析を加えることにより、PP細胞を起点とした膵内分泌細胞の発生過程の詳細を明らかにしたい。
研究が計画よりも早く進んだためと考えられる。来年度、Ppy-GFPノックインマウス等を用いた新たな解析を行なうことにより、使用を完了したい。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件) 図書 (3件) 備考 (1件)
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