研究課題/領域番号 |
16K09765
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
藤谷 与士夫 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (30433783)
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研究分担者 |
原 朱美 順天堂大学, 医学部, その他 (60570009) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵島 / PP細胞 / β細胞 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、Ppy遺伝子Creノックインマウスを用いたPP細胞系譜の追跡により、PP-β細胞間の分化転換機構を解明し、PP細胞が新たなβ細胞の起源となることを実証することである。 PP細胞の細胞系譜追跡を行なう目的で、Ppy-CreノックインマウスとROSA26 promoter-EYFPを交配し、Ppy-Cre/+:ROSA26-EYFPマウスを作出した。我々が独自に開発したPP特異的モノクローナル抗体を用いて12週齢のPpy-Cre/+:ROSA26-EYFPマウスの膵島を解析したところ、GFP陽性細胞の中にはPP陽性細胞に加えて、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン陽性細胞も認められた。そして興味深いことに、GFP陽性細胞のうち、最終的にPP細胞に分化したのは20%程度に過ぎなかった。現在、Ppy発現細胞でPdx1を欠損させた場合、あるいはPpy発現細胞にPdx1およびMafAを強制発現させたのちの、Ppy発現細胞のその後の運命を追跡する実験に着手している。 これらにより、Ppy発現細胞が各内分泌細胞へと分化してゆく分子メカニズムを解明したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pancreatic polypeptide(PP)に特異的に結合し、PPと相同性の高いNPY, PYYとは結合しない抗PPモノクローナル抗体の開発を学術論文に報告した(Hara A et al. Endocr J, 2019)。本抗体はIBL社から市販される予定である。さらに研究を進めたところ、PP発現細胞からはβ細胞のみならず、α細胞やδ細胞も含めたすべての内分泌細胞が分化することが判明した。すなわちPPY発現細胞は膵内分泌前駆細胞として機能する、これまでにcharacterizeされていない細胞集団であると考えられる。膵島発達期において、PPY発現細胞がこのような多能性を持つことから、今後PPY細胞がどの時期までそのような能力を有するのか、adultPPY細胞も、状況により、β細胞を産み出すソースとなり得るるのかに興味が持たれる。PP細胞があらたな膵β細胞の起源細胞としての役割を有する可能性を示唆する発見である。
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今後の研究の推進方策 |
我々が開発した特異的PP細胞を用いて、膵臓の発生過程、とくに胎生膵におけるPPの発現パターンを詳細に検討する。とくに他の内分泌マーカーとの時空間的関係について検討し、PP発現細胞から他の内分泌細胞がどのように分化してゆくのかを明らかにしたい。
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