研究課題
本研究では、nesfatin-1が視床下部で作用して脂肪組織交感神経を興奮させる脳内メカニズムを解析することを目的とした。具体的には、nesfatin-1が視床下部に作用して脂肪組織交感神経を調節する際にERKが活性化する標的神経核とどのようなニューロンでERKが活性化されるかについて明確にする実験を行った。麻酔下ラットの白色脂肪交感神経活動は、脳室内nesfatin-1投与で促進された。脳室内nesfatin-1投与は視床下部の弓状核と室傍核のERK活性化を惹起することから、nesfatin-1微量投与実験を行ったところ、室傍核内ではなくて、弓状核内へのnesfatin-1微量投与で白色脂肪交感神経活動が増大した。さらに免疫組織化学染色法とin situハイブリダイゼーション法でnesfatin-1による弓状核ERK陽性細胞が摂食調節ニューロンであるNPYニューロンとPOMCニューロンのいずれかのニューロンと共局在するか解析した結果、弓状核ERK陽性細胞は、NPYニューロンと共局在していた。今後は、さらに弓状核NPYニューロンのERk活性化が白色脂肪組織交感神経活動調節にどのような役割を持つかについて解析する。さらにラットへのNesfatin-1脳室内投与は、延髄の弧束核と吻側延髄腹外側野のc-fos陽性細胞数を増大させることがわかった。延髄での交感神経を駆動する神経核と視床下部弓状核ニューロンがどのような神経回路を経て交感神経を調節しているかについて今後解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、nesfatin-1が視床下部で作用して脂肪組織交感神経を興奮させる脳内メカニズムを解析することを目的としている。現在までのところ、脳・視床下部においてnesfatin-1が白色脂肪組織交感神経を活性化させる為に視床下部・弓状核の摂食調節ニューロンの関与を示唆するデータがとれている。さらに、延髄での神経核についても標的がしぼれつつある。従って、これらの主要な項目の同定は、当初の目的に沿って研究を推進できている。
今後は、これまでわかった実験事実を基盤に、nesfatin-1による脂肪組織交感神経調節作用での視床下部-延髄経路を明確にする。具体的には、nesfatin-1投与によって活性化する延髄の神経核と視床下部弓状核のニューロンがどのような神経回路を構成しているかについて解剖学的方法と電気生理学的方法で検討する。特に、標的となる延髄の神経核にトレーサーを注入して視床下部弓状核との神経連絡を同定する実験や延髄の神経核に神経伝達物質阻害剤を投与する実験も行う予定である。
実験計画として、電気生理実験や生化学及び組織学実験は順調に進んでいたが、実験の順序を変更した点と次年度以降に使用する物品費等が計画以上にかかる点を考慮した。その結果、次年度使用額が発生した。
電気生理実験に必要な物品費を優先させ、生化学及び組織学実験にかかる物品費を計上する。研究成果が出た場合は、学会発表と論文発表を行う予定で、その経費についても計上する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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