研究課題/領域番号 |
16K09767
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
谷田 守 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (70512309)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自律神経 / 視床下部 / 延髄 / 白色脂肪 / nesfatin-1 |
研究実績の概要 |
本研究では、摂食調節物質であるnesfatin-1が視床下部に作用して脂肪組織交感神経活動を増大させる脳内機構を明らかにすることを目的とした。前年度の免疫組織化学染色実験で、nesfatin-1による視床下部弓状核ERKシグナルは、NPYニューロンで惹起され、脂肪組織交感神経活動を調節する可能性を示した。さらに、nesfatin-1のラット脳室内投与が延髄の弧束核と吻側延髄腹外側野のc-fos陽性細胞を増大させることを示した。今年度は、視床下部と延髄経路の解析を中心に実験を行い、具体的には延髄カテコラミンニューロンが延髄の神経核で活性化しているかについて免疫組織学的に検討した。Nesfatin-1の脳室内投与は弧束核尾側部と尾側延髄腹外側野のc-fos陽性細胞とカテコラミン陽性細胞の共局在が確認された。現在、これらの神経核に逆行性トレーサーを注入して、視床下部弓状核のERKニューロンと神経連絡があるか否かについて解析を行っている。また延髄のカテコラミンニューロンを薬理的に除去したラットを用いて、nesfati-1脳室内投与による脂肪組織交感神経活動反応を解析する予定である。さらに今年度では、Nesfati-1の脳内投与のみならず、末梢静脈内投与による白色脂肪交感神経活動への影響について麻酔下マウスを用いて検討したところ、濃度依存的に白色脂肪及び腎臓交感神経活動が増大することがわかった。このことは脳内のみならず、末梢のnesfatin-1が脳へ作用して交感神経を制御することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、摂食調節物質であるnesfatin-1が視床下部に作用して脂肪組織交感神経活動を増大させる脳内機構を明らかにすることである。これまでのところ、視床下部におけるERKシグナルと標的神経核に関する解析は順調である一方、視床下部と連絡する延髄の神経核及び連絡網の解析が遅れている。延髄で活性化する神経核は絞れつつある為、当初の研究目的に沿った研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、これまで明らかにした実験データを基盤に、nesfatin-1による脂肪組織交感神経調節作用における視床下部ー延髄神経回路を明確にしていく。具体的には、延髄神経核に逆行性トレーサーを注入する実験、延髄神経核で機能する細胞内シグナルを同定する実験を中心に行っていく。また、長期間nesfatin-1を脳室内へ投与した際の、脂質代謝及び循環機能への影響を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 実験計画と使用物品について、電気生理実験と免疫組織化学実験については順調に進んでいたが、実験の順序を変更したこと、予想外の結果が出たことによる実験計画の再考、次年度以降に使用する物品等が計画以上にかかる点を考慮した。その結果、次年度使用額が発生した。 (使用計画) 電気生理実験における必要な物品を優先させる。現在、動物実験で使用する麻酔薬を再考しており、そのセットアップを優先させる。また研究成果が出た場合は、論文投稿や学会発表を積極的に行い、その費用も計上する。
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備考 |
金沢医科大学 生理学Ⅱ講座 http://www.kanazawa-med.ac.jp/~physiol2/
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