研究課題
本研究では、摂食調節物質であるnesfatin-1が視床下部に作用して脂肪組織交感神経活動を増大させる脳内機構を明らかにすることを目的とした。前年度と前々年度の研究から、nesfatin-1による脂肪組織交感神経促進作用には、視床下部弓状核のNPYニューロンと延髄カテコラミンニューロンが関与する可能性について免疫組織化学染色法によって示してきた。本研究ではこれらの脳における連絡網をさらに解析するために、薬理的に阻害する実験を行った。具体的にはカテコラミンニューロンの阻害剤であるチロシン代謝酵素を標識したサポリン毒素を延髄腹外側野の両側に微量注入して、部位特異的にカテコラミンニューロン破壊ラットの作製を試みたが、破壊ラット作製の成功率は低かった(3匹/16匹中)。得られた破壊ラットにnesfatin-1を脳室内投与して、腎臓又は脂肪組織交感神経活動を測定した。カテコラミンニューロン破壊ラットでNesfatin-1による脂肪組織交感神経活動促進作用は観察されたが、腎臓交感神経促進作用は減弱されていた。また視床下部弓状核でのPOMCニューロン由来のα-MSH受容体のMC-4受容体の阻害剤を投与したラットでは、nesfatin-1による脂肪組織交感促進作用は残存して、腎臓交感神経活動促進作用が減弱していた。こららの実験結果から、脳視床下部と延髄経路におけるnesfatin-1による交感神経制御機構を解析した結果、視床下部メラノコルチン系-延髄カテコラミンニューロン系はnesfatin-1による腎臓交感神経調節に関与しており、脂肪組織交感神経調節は別の制御機能が存在することが示唆された。
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