日本人1型糖尿病患者における抗INS-IGF2自己抗体を測定し、日本人1型糖尿病患者におけるINS-IGF2の膵島自己免疫への関与を明らかにし、またスウェーデン人と比較する事で、1型糖尿病発症メカニズムの解明に寄与することを目的とし、日本人1型糖尿病患者303名、日本人対照者359名における検討を行った。 日本人1型糖尿病患者(劇症1型糖尿病、急性発症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病)、および日本人対照者の抗INS-IGF2自己抗体を共同研究機関であるルンド大学にてRadioligand Binding Assay法を用いて測定した。その結果、日本人1型糖尿病患者は日本人対照者に比し抗INS-IGF2自己抗体は有意に低値であった。特に、急性発症1型糖尿病患者、および緩徐進行1型糖尿病患者では、非標識インスリンを用いてINS-IGF2分子内に存在するインスリンB鎖の一部に対する自己抗体の影響を取り除いた時のみ有意に低値であった。これまでの報告では、スウェーデン人1型糖尿病患者ではスウェーデン人対照者に比し抗INS-IGF2自己抗体が高値を示しており、スウェーデン人1型糖尿病患者と日本人1型糖尿病患者において結果が異なっていた。なお、今回の測定結果については、小集団に分類する、他の膵島関連自己抗体と抗INS-IGF2自己抗体との関係について調べる等、別の解析を追加することで、より詳細な検討を行う予定である。 日本人とスウェーデン人では1型糖尿病の発症メカニズムの一部が異なっている可能性を示す大変興味深い結果であり、今後、INS-IGF2に関するさらなる究明が必要と考えられた。
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