令和1年度(2019年度)は本課題研究の最終年度にあたり、実際に肥満を有するなかでの耐糖能異常が肥満の軽減とともに改善する際の膵・腸管内分泌環境の変化を検討した。肥満改善とともに腸管内分泌因子の膵島への効果が外科的治療下に起こりえることがあきらかとなった。さらにこの腸管内分泌因子と膵内分泌ホルモンの分泌との関連について、これらの過剰分泌が低血糖を惹起する場合において、外因性のソマトスタチンが膵内分泌ホルモンを抑制する際に、栄養素負荷後の腸管内分泌因子を強力に抑制していることを捉えた。これらから根本的な病態の改善、臨床的対応が容易でない耐糖能異常時の膵・腸管内分泌連関にかかる知見を得た。これらはこうした治療抵抗性を示す病態の治療を検討する上で腸管内分泌状態の把握が有用である可能性を示唆するものであると考える。この腸管内分泌ホルモンであるインクレチンについてさらに、諸疾患治療に際してのhypercortisolismにともなう高血糖増悪時の治療におけるインクレチン関連薬の有用性や、他方で併存疾患の進行をしめすような臨床経過修飾にかかわる可能性についてのあらたな知見もえられている。また、糖尿病治療のなかで見出しうる内分泌異常における神経内分泌状態をあらわす指標の特徴も示しえたなど、本課題研究を通して、治療抵抗性を示す糖尿病の背景にある腸管環境・内分泌環境についての知見を示し得た。これらの成果は国内外の学会、学術誌に報告した。
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