研究課題
(1) 糖尿病状態の脳で観察されるSCAPの減少がアストロサイトとニューロンの機能に与える影響を評価する目的で、SCAP欠損アストロサイトと初代培養野生型ニューロンの共培養をおこなった。対照アストロサイトと比較して、共培養した初代培養野生型ニューロンの形態的成熟度は有意に未熟で、神経突起長の短縮と分岐数の減少が見られた。アストロサイトにおけるSCAP減少が、ニューロンの成長と成熟を阻害する可能性を示唆する。(2) hGFAP-CreERT2::Scap(f/f)マウスに成長後タモキシフェンを投与しSCAP欠損を誘導した後、免疫染色で海馬および脳室周囲の神経幹細胞数を評価した。adult neurogenesisに影響する可能性を検討している。(3) 糖尿病の脳ではAMPK活性が上昇し、SCAPが減少する。AMPKα1ノックダウンまたはAMPK上流のLKB1ノックアウトにより、初代培養グリア細胞のSCAPが軽度増加することを確認した。ファトスタチンによりSCAP-SREBP複合体のゴルジ体への輸送を阻害するとAMPK活性化薬AICARによるSCAPの減少が抑制される。COPII小胞輸送に関わるRab2aをノックダウンすることで、初代培養グリア細胞のSCAPが増加することを見出した。AMPKシグナルはRab2経路を介してSCAP-SREBP複合体のゴルジ体への輸送を促進する可能性がある。(4) SREBP-2 floxマウスを神戸理研との共同開発により作製し、系統樹立した。初代培養グリア細胞にアデノウイルスベクターを用いてCreリコンビナーゼを発現させ、SREBP-2経路の発現低下を確認した。(5) 入院患者を対象に血清ステロール代謝物と認知機能の関連を調べ、相関の認められる候補物質を同定した。
2: おおむね順調に進展している
複数の組織特異的欠損マウスの作製および解析は進行している。ヒト血清を用いて認知機能と相関のある新規脂質マーカー同定に至っている。
SREBP-2 floxマウスを使用したアストロサイト実験系を構築する。新規脂質マーカーについて、画像解析を組み合わせた研究を計画する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
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