研究実績の概要 |
メタボリックシンドロームはインスリン抵抗性を基盤として糖脂質代謝異常を呈し、しばしば脂肪肝(NAFLD)を合併する。近年、オーファン受容体として知られていたG蛋白共役型受容体、GPR40のリガンドが中・長鎖脂肪酸であることが示された。GPR40は齧歯類の膵β細胞に高発現し、in vitroにおいて中長鎖脂肪酸によるグルコース応答性インスリン分泌の増強に関与する。 本研究では、GPR40のin vivoでの生理的意義が不明である点を踏まえ、脂肪肝・高脂血症・インスリン抵抗性を含む、糖脂質代謝調節に関与する可能性を明らかにする目的で、GPR40KOラットの解析を行った。 GPR40KOラットでは6~7週齢においては体重、摂餌量、空腹時血中脂質(遊離脂肪酸、中性脂肪、総コレステロール)濃度、腹腔内インスリン負荷試験(ipITT)での負荷後血糖低下率はGPR40KOラットとWTラットで差がなかった。GPR40KOラットで腹腔内糖負荷試験(ipGTT, 2g/kg)でWTラットと比べ血糖は負荷後30分から120分まで有意に高値で、血中インスリン濃度は負荷後15分のみWTラットと比べ著明に低値だった。さらに、経口食事負荷試験(meal tolerance test [MTT], 24kcal/kg)では、GPR40KOラットでWTラットと比べ、負荷後15分および30分で有意に血糖が上昇し、負荷後15分の血中インスリン濃度が低下していた。本研究の結果から、GPR40のin vivoでのインスリン分泌および糖代謝調節での生理的意義が強く示唆される。
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