研究課題
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の肝臓RNAシークエンスの結果について、TopHat、Cufflinksにて発現定量を行った。繊維化レベルにより軽症NAFLDと進行NAFLDの2群に分け、2群間で約1700の発現変動遺伝子を同定した。発現変動遺伝子について遺伝子共発現ネットワークの解析ツールであるweighted gene co-expression network analysis(WGCNA)を用いて解析を行った。その結果4つのモジュールにクラスターされた。一番大きなモジュールには細胞外マトリックスやシグナルに関連する遺伝子が集簇しており、4個のハブ遺伝子を有するスケールフリーネットワークを構成していた。ハブ遺伝子には細胞外マトリックスに関連するPAPLN、癌抑制作用のあるLBH、DPYSL3、癌関連遺伝子のJAG1が含まれており、いずれもNAFLDの線維化進行に伴い発現量が増加していた。NAFLDの線維化や癌発症に重要な役割を果たすと考えられた。2番目のモジュールにはミトコンドリアに存在する遺伝子が集簇しており、ランダムネットワークを構成していた。これらの遺伝子はNAFLDの線維化進行に伴い減少し、従来報告されてきたミトコンドリア機能異常を反映していた。3つ目のモジュールはネットワークを形成しなかったが、核内に存在する遺伝子が多く含まれていた。肝臓RNAシークエンスによりNAFLDの病態を分子レベルで包括的に示すことができた。同じ肝臓組織よりゲノムを抽出し、メチル化解析も行った。発現変動遺伝子の大半はゲノムDNAのメチル化の変化を伴っており、DNAメチル化がNAFLDの病態に関連することを明らかにして、論文報告を行った。RNAシークエンスを行った同一人物の血液ゲノムのエクソンシークエンスを行い、RNAとDNAの多型を同定した。
2: おおむね順調に進展している
RNAシークエンス解析については論文が受理されたことが大きい。単に発現変動遺伝子を同定しただけでなく、知識ベースに依存しない遺伝子ネットワーク解析により、NAFLDの病態を説明できる包括的な解析が出来た。メチル化解析については、日本人での解析と既に報告されているアメリカ人のデータを用いて解析し、NAFLDの進行に重要な遺伝子を20以上同定することが出来た。その結果をまとめて論文を作成し投稿するに至っている。さらに、エクソンシークエンスの解析も開始出来たので、おおむね順調に進行していると考える。
メチル化解析の結果について論文受理を目指す。エクソンシークエンスについては、2016年度に行った8例について解析を行い、症例を追加してさらに検討を行い、論文投稿を行う。
論文は2016年7月に投稿を開始したが、当初計画していたジャーナルに採択されず、別のジャーナルに受理されることになり、また採択日が2017年2月にずれこみ、印刷費等の経費が次年度使用額となった。尚、採択されるジャーナルによっては30万程度の掲載費用が掛かかるので、上記金額となった。
論文が採択されたので、印刷費や投稿費用が生じればそれに使用する。余剰分は研究に使用する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Hepatology Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/hepr.12877
巻: 46 ページ: 1011-1008
10.1111/hepr.12648