研究課題
プロリン異性化酵素Pin1は、様々な標的蛋白に結合し、その機能を調節している酵素である。我々は、Pin1と熱産生との関係を明らかにするために、脂肪細胞特異的Pin1 KOマウスを作製し、寒冷刺激下での体温低下を検討したところコントロールマウスと比較して、体温低下が軽度であった。さらに肥満モデルマウスの皮下脂肪や褐色脂肪では、Pin1の発現が顕著に増加していた。以上より、Pin1は、熱産生の調節に重要であることが推測された。そこで、寒冷刺激後、両マウスより皮下脂肪と褐色脂肪を摘出し、熱産生関連遺伝子の発現量を調べた。その結果、Pin1 KOマウスの脂肪組織では、UCP-1やCidea等の熱産生関連遺伝子の発現量が顕著に増加していた。また、UCP-1蛋白量もKOマウスの脂肪組織において顕著に高かった。一方、脂肪分化関連遺伝子は、両マウスにおいて差が認められなかった。以上より、脂肪組織においてPin1を欠損させると、脂肪分化は正常であるものの、熱産生関連遺伝子の誘導が障害されると考えられた。そこで、次に熱産生に関するPin1結合蛋白について調査したところ、転写共役因子であるPRDM16が同定された。まず結合部位について検討したところ、Pin1は、N末側のWW domainを介してPRDM16と結合した。一方、PRDM16は、N末側のPR domainがPin1との結合に必要であった。さらに、Pin1によるPRDM16の機能制御について検討したところ、Pin1は、PRDM16の蛋白分解を促進することが明らかとなった。以上より、Pin1は、PRDM16の機能制御により熱産生を抑制していることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
Pin1が熱産生を抑制することを明らかにし、さらにそのメカニズムとして転写共役因子PRDM16をPin1結合蛋白として同定し、その機能制御まで明らかにしたので。
①Pin1が標的蛋白と結合するためには、標的蛋白側がリン酸化されている必要がある。そこで、PRDM16をリン酸化するキナーゼの同定を試みる。②脂肪特異的Pin1 KOマウスを用い、コントロールマウスと比較して体重の増加や糖・脂質代謝に変動が認められるかを検討する。③Pin1阻害剤をマウスに投与することで、熱産生関連遺伝子の上昇や体重増加の抑制が認められるかを検討する。
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Int J Mol Sci.
巻: 17 ページ: -
10.3390/ijms17091495