研究課題
転写因子prolactin regulatory element binding (PREB)は、全身の組織に発現されており、その機能は不明のままであった。我々の研究室では各組織におけるPREBの機能解析を行い、現在までに膵β細胞や脂肪組織、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞において生活習慣病に関連する転写因子であることを報告してきた。予備研究において脂肪負荷による脂肪肝モデルマウスにおいても転写因子PREBの過剰発現を確認し、(PREB-Tgマウス;組み替えDNA承認番号:10219)を作成し、PREB-Tgマウスではコントロールマウスに比較して、高脂肪食に対する脂肪肝形成の抑制とコントロールマウスと比較して膵ランゲルハンス島の増殖認めた。このメカニズムを解明するためにATP-binding cassette transporter A1(ABCA1)分子に注目した。ABCA1は細胞からHDLにコレステロールを転送する分子であり、ABCA1の転写発現調節にPREBが関与していることを我々は証明してきた。既に肝細胞におけるABCA1は脂肪合成を抑制的に制御し、高血糖などの代謝障害により、ABCA1発現が抑制されると脂肪合成が活発になり、高中性脂肪血症、および脂肪肝が形成されること (BBA-Mol Cell Biol L. 2012. 1821:770-77)が報告されている。今回、肝臓におけるABCA1の発現がPI3-kinease/Aktを介した経路が関与し、PI3-kinease系の抑制により、肝細胞内の脂質の蓄積が低下することを証明した。また膵臓におけるABCA1発現にP38-MAPKの関与を明らかにした。P38-MAPKを介したABCA1の発現抑制により膵β細胞内のコレステロール含有量は増加し、β細胞機能障害をきたしていると解明できた。細胞内脂肪蓄積やそれによる細胞機能障害のターゲットの一つがABCA1発現であり、今後さらにPREBによるABCA1遺伝子の発現調節が新たな生活習慣病の治療方法に繋がると推察できた。
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