研究課題
中枢神経系の機能は、神経細胞とグリア細胞の相互作用によって調節されており、特に、グリア細胞の中でもマイクログリアが種々の中枢神経系機能障害に深く関わっていることが明らかになりつつある。特に、神経細胞から放出されるfractalkine(FRK)はマイクログリアに存在するCX3CR1受容体に作用し、神経細胞とマイクログリアのクロストークの重要な因子であると考えられ、最近、主要な中枢神経系機能(学習記憶、神経可塑性、神経変性、脳内炎症)の調節に関わっていることが報告されている。糖尿病は認知機能の低下を伴う代謝性疾患である。そこで、本研究課題で、ストレプトゾトシン(STZ)投与による1型糖尿病モデルマウスの学習記憶障害における海馬のFRK-CX3CR1シグナルについて検討した。STZ投与により学習記憶障害、血中コルチコステロンレベルの有意な増加および血中IGF-1の有意な減少が認められ、海馬でのFRKおよびCX3CR1発現の有意な減少が認められた。さらに、正常オスマウスにCX3CR1のアンタゴニストである18aを側脳室内投与すると著明な学習記憶障害が誘発された。Dexamethasoneの適用によって、初代培養神経細胞のFRK mRNA発現は変化せず、初代培養マイクログリア細胞のCX3CR1 mRNA発現は有意に減少した。IGF-1を適用したところ、初代培養神経細胞のFRK mRNA発現および初代培養マイクログリア細胞のCX3CR1 mRNA発現の有意な増加が認められた。次に、正常オスマウスの皮下にDEXを投与すると、血中IGF-1の有意な減少と海馬でのFRKおよびCX3CR1 mRNA発現の有意な減少が認められた。これらのことから、1型糖尿病モデルマウスの学習記憶障害に海馬のFRK-CX3CR1シグナルの低下が関与する可能性が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
ストレプトゾトシン投与の1型糖尿病モデルマウスの解析が順調に進み、fractalkine-CX3CR1 signalingの学習障害に関わる役割を明らかにすることができた。
(1)高脂肪食摂取時の脳内炎症の調節にfractalkine-CX3CR1 signalingがどのようにかかわっているのかを検討する。(2)Fractalkine-CX3CR1 signalingの摂食調節に及ぼす作用を検討する(3)報酬系でのfractalkine-CX3CR1 signalingの作用を検討する。
すべて 2016
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Peptides
巻: 81 ページ: 38-50
http://doi.org/10.1016/j.peptides.2016.03.014