研究課題
5種の組織特異的XORKOマウス、すなわちマクロファージ特異的XORKOマウス(MφXORKO)、血管内皮特異的XORKOマウス(VEXORKO)、肝細胞特異的XORKOマウス(LXORKO)、脂肪特異的XORKOマウス(FXORKO)、小腸上皮特異的XORKOマウス(IXORKO)を作出した。各臓器のXOR活性および血漿におけるXOR活性を検討したところ、MφXORKOは骨髄・脾臓で顕著な活性低下、VEXORKOマウスでは諸臓器での活性低下、LXORKOは肝臓のみほぼ完璧な活性低下、FXORKOは白色、褐色脂肪での中等度活性低下、IXORKOでは小腸で顕著な活性低下を得た。血漿XORKO活性はMφXORKO、LXORKOで顕著に低下していた。これらの結果をもとに、まず通常食下での糖負荷試験、インスリン負荷試験を実施し、腹腔インスリンによるインスリン標的臓器のAktリン酸化や遺伝子発現を評価したところ、MφXORKO、VEXORKOでのみXORKOによる効果を認め、耐糖能に優れていた。他の系統に関しては、今回作出した系統も含め通常食下では明らかな変化を認めなかった。一方、ほぼすべての系統の肝・筋・脂肪でXORKOによってインスリン誘導性Aktリン酸化の亢進を認めており、XORKOの欠損によって生じた代謝産物などの影響が全身性の要因となっていると考えられる。現在通常食で影響の見られなかった系統について、IXORKOを含め研究計画に記したNASH、インスリン抵抗性の系の検討を行っている。さらに一部の系統では臓器重量の変化を認めたため、その原因についてさらに検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
腸管上皮特異的XORKOマウスの繁殖に遅れが出たが当該年度では繁殖の工夫を行った結果、生育が可能となった。したがって5種類のKOマウスについての繁殖が完了し、インスリン抵抗性の評価が完了した。現在はNASHモデルの検討を行っている。ただし、臓器別のXOR活性について検討したところ、血管内皮特異的XORKOマウスでは血管内皮に対する特異性について別途検討が必要な可能性が生じている。もともとほとんどの臓器が血管内皮を擁するため、慎重に検討を行う。
5種のXORKOマウスが得られたため、現在行っている解析を進めるとともに、これらの動物からの単離組織、単離細胞およびそれらの初代培養を用いた検討を行うことで各細胞内でのXORKOの働きについての検討を進める。またまもなくトランスクリプトーム解析の結果が出るため細胞内で動作している転写因子の推定が進むことが期待され、その結果をChIPアッセイなどを用いて検証していく。
研究計画のうち、一系統のマウスの樹立およびサンプル解析のために必要な産仔数確保が遅れた結果、実験が次年度にずれこんでいる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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