研究課題/領域番号 |
16K09798
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
水谷 哲也 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (90322734)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 卵巣 / 顆粒膜細胞 / FSH / YAP / TAZ |
研究実績の概要 |
Hippo pathwayは、細胞の増殖や器官サイズを制御するシグナル伝達系で、この経路が活性化すると転写共役因子YAP/TAZがリン酸化されて核外に移行し不活性化する。卵胞発育期における顆粒膜細胞では、YAP/TAZの標的遺伝子であるCTGFとCYR61の発現量が非常に高いことから、この時期の顆粒膜細胞ではYAP/TAZ活性が高いと考えられた。しかし、卵胞がPreovulatory follicleまで発育するとこれらの発現は顕著に抑制される。このことから、FSH刺激により卵胞がAntral follicleからPreovulatory follicleまで発育するとHippo pathwayの活性化によりYAP/TAZによる転写活性が抑制されると考えられた。そこで、卵胞発育期の顆粒膜細胞でダイナミックに活性が変化するYAP/TAZについて、卵巣における役割を検討した。 YAPの恒常性活性化型である5SA-YAPのアデノウイルス発現系を作製し、卵巣顆粒膜細胞由来KGN細胞および初代培養ラット卵巣顆粒膜細胞に5SA-YAPを導入して、細胞増殖や遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。その結果、これらの細胞への5SA-YAPの導入により、細胞増殖の促進が認められた。また、5SA-YAPの遺伝子発現に対する影響を検討したところ、cAMPシグナルで誘導される多くの遺伝子が5SA-YAPの導入により発現が抑制された。このことからYAP(TAZ)は細胞の増殖を促進し分化を抑制する重要な因子であると考えられた。さらに顆粒膜細胞でFSHによるpreovulatory follicleへの成熟にYAP/TAZ活性の抑制が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に予定していたように、ラット初代培養系およびヒト由来顆粒膜細胞株KGN細胞を用いて、網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、YAP/TAZが顆粒膜細胞の増殖や成熟(分化)を制御する上で重要であることを示すデータを得ている。このように本年度の研究により、YAP/TAZが卵胞の発育過程を制御する重要な因子であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
卵胞発育におけるYAP/TAZの役割をより詳細に明らかにするため、上記細胞系を用いてYAP/TAZノックダウンによる影響を検討する。また、YAP/TAZの作用機序を明らかにするため、ルシフェラーゼアッセイやChIPアッセイなどの解析法を用いて、標的遺伝子の発現調節メカニズムについて解析予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要とした消耗品が、予定より少なく済んだため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子解析用試薬を予定より多く購入し、研究予定より詳細な遺伝子発現解析を行う。
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