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2016 年度 実施状況報告書

代謝と消化の内分泌性制御における内分泌型FGFの統合的役割

研究課題

研究課題/領域番号 16K09800
研究機関京都大学

研究代表者

田中 智洋  京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (20402894)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードFGF / 脂質代謝 / 消化 / 膵液 / オミックス
研究実績の概要

内分泌型FGFであるFGF19、FGF21、FGF23のうちFGF19とFGF21は視床下部、肝臓、膵臓、脂肪組織などの栄養代謝に重要な臓器群に発現、ないし作用することでほ乳類個体のエネルギー恒常性制御に必須の役割を果たす。本研究では特にFGF19に着目し、膵消化液分泌と肝臓の代謝制御における意義を解析し、栄養物質の消化吸収におけるFGFの統合的役割を解明することを目指した。平成28年度には、充分量の膵液を得るためにラットモデルが必要であったことから、FGF19の受容体であるbeta Klothoを全身で欠失するbeta Klothoノックアウトラット系統をCRISPR/Cas9システムを用いて新たに樹立し、シークエンスのチェックによる遺伝子欠損の確認と、それによる既知の肝標的遺伝子発現プロファイルの変化を確認した。樹立したラットの繁殖に努め、解析に用いる交配のための親となる一群のホモノックアウトラット個体を得ることができた。一方、beta Klothoノックアウトマウスを用いて肝臓での脂質代謝に関する網羅的解析を行い、胆汁酸代謝のみならずこれまで知られていないあたらしいFGF19/beta Klothoシグナルの標的遺伝子群を同定した。beta Klothoノックアウトマウスでは高炭水化物食摂餌下で肝臓の脂肪含量の増加や肝細胞障害を示す所見が認められた。これら成果に基づき、今後は経口投与した脂質が消化・吸収・体内分布を受ける際にbeta Klotho欠損により如何なる影響を受けるかについて詳細を検討する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CRISPR/Cas9システムによるノックアウトラットの作製は順調に実施でき、タンパク質レベルでのbeta Klotho発現の消失がウエスタン法により確認できた。マウスでの実績から予測できたようにノックアウトマウスの出生率はメンデル則よりも少ないが、後輩の努力により樹立した系統の維持、解析に向けた繁殖についてはうまくゆきつつある。一方、膵液の回収実験は手術技法が必要であり、安定した採取に向けた努力を続けている。マウス肝臓の網羅的遺伝子発現解析は問題なく実施でき、その結果の解析についても実施が可能であった。今後その結果を踏まえた標的遺伝子の絞り込み作業を実施する予定である。

今後の研究の推進方策

beta Klothoノックアウトラットを解析に必要な頭数にまで引き続き繁殖させ、これを用いて、FGF19依存性の膵液分泌促進作用がFGF19の受容体であるbeta Klothoの欠損により消失するかどうかを明らかにする。一方、マウス肝臓の遺伝子発現解析からはこれまでに既に確立している胆汁酸や脂質代謝関連遺伝子群だけでなく、全く未知の遺伝子群がFGF19/beta Klothoシグナルシステムの下流で駆動されていることが明らかとなりつつある。これらのネットワーク解析などのin silico研究に加え、今後は培養細胞を用いたメカニズム研究を実施することにより、標的遺伝子の絞り込みと栄養代謝における位置づけを解明してゆく計画である。

次年度使用額が生じた理由

beta Klothoノックアウトラットの作製に予定以上に時間がかかったため、その繁殖のための平成28年度中には予定していた飼育維持費用や飼料費等が不要となったため。また、おそらく遺伝子欠損に伴う発生過程の障害のためbeta Klothoノックアウトマウスが予定していた頭数は出生しなかったため、計画していた肝臓の病理組織学的解析、生化学的解析に遅延が生じ、これらの一部解析を平成29年度に行うこととせざるを得なかった。

次年度使用額の使用計画

平成28年度後半にいたり、マウス、ラットともに交配に必要な充分な親個体の確保が実現したため、現在鋭意交配、繁殖中である。よって、平成28年度に計画するも実現していなかった実験を平成29年度に実施することが可能な見通しが立っており、本資金はそのために使用する計画である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Reevaluation of anti-obesity action of mazindol and elucidation of its effect on the reward system2016

    • 著者名/発表者名
      D. Aotani, C.Son, Y. Shimizu, H. Nomura, T. Hikida, T. Kusakabe, T. Tanaka, T. Miyazawa, K. Hosoda,
    • 雑誌名

      Neuroscience Letters

      巻: 633 ページ: 141-145

    • 査読あり
  • [学会発表] グレリン分泌細胞におけるGPCR発現解析および新規調節因子の探索2016

    • 著者名/発表者名
      小山博之、岩倉 浩、坂東美佳、田中智洋、今枝憲郎、中尾一和
    • 学会等名
      第43回日本神経内分泌学会学術集会
    • 発表場所
      浜松
    • 年月日
      2016-10-14
  • [学会発表] Key role of dietary linoleic acid excess in obesity - a lipidomics-based analysis2016

    • 著者名/発表者名
      T Tanaka, M Inoue, T Sonoyama, Y Ogino, T Guo, H Koyama, T Unzai, K Imaeda, K Nakao
    • 学会等名
      第37回日本肥満学会(The 37th Annual Meeting of Japan Siciety for the Study of Obesity)、Japan Korea Taiwan(JKT) Joint Symposium
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-10-08
    • 国際学会
  • [学会発表] 高脂肪食による視床下部リピドーム変化の病態生理的意義2016

    • 著者名/発表者名
      田中智洋、井上雅文、園山拓洋、荻野陽平、Tingting Guo、小山博之、今枝憲郎、中尾一和
    • 学会等名
      第37回日本肥満学会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-10-07
  • [学会発表] Dynamism of the Hypothalamic Transcriptome Uncovers “Stages” during the Development of Diet-Induced Obesity in Mice2016

    • 著者名/発表者名
      T Tanaka, T Sonoyama, H.Sawada, M.Inoue, Y Ogino, T Guo, K Nakao
    • 学会等名
      European Obesity Summit
    • 発表場所
      Gothenburg ( Sweden)
    • 年月日
      2016-06-03
    • 国際学会
  • [学会発表] 統合オミクス解析から迫る肥満の視床下部障害の分子実態2016

    • 著者名/発表者名
      田中智洋
    • 学会等名
      第89回日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      2016-04-23
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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