研究課題
内分泌型FGFであるFGF19、FGF21、FGF23のうちFGF23は主に骨に発現しカルシウム・リン恒常性の維持に必要である。一方、栄養代謝に重要な臓器に発現して臓器間情報伝達を担うFGF19とFGF21は、いずれもエネルギー恒常性の維持に重要と考えられてきたが、その機能的差異や作用の分子機序における同異がこれまで必ずしも明確ではなかった。たとえば、FGF19の作用とFGF21の作用には一部が共通していること、またいずれもがbeta Klothoを共受容体として必要とすること、などからある種Redundantである可能性も考えられつつある。本研究では、これまで、特にFGF19に着目し、膵消化液分泌と肝臓の代謝制御における意義を解析し、栄養物質の消化吸収におけるFGFの統合的役割を解明することを目指してきた。平成29年度には、これまでの遺伝子改変動物作製の成果を踏まえて、beta Klothoノックアウトマウスの肝臓におけるトランスクリプトームデータに加えて、FGF15(マウスFGF15はヒトFGF19のオルソログ)やFGF21遺伝子改変マウスの肝臓に関する解析をも加えた。このことにより、beta Klothoシグナルの標的遺伝子群を、FGF15ないしFGF21の標的遺伝子群と比較することにより、Metabolic FGFと呼ばれるこれら2つのFGFの作用の共通点と相違点を理解し、代謝と消化の内分泌性制御における内分泌型FGFの共通作用と使い分けに関する知見を得ることが出来た。ただし、遺伝子改変動物、特にFGF21ノックアウトマウスの繁殖と実験に十分な頭数の確保に予想以上の時間を要したため、一部の網羅的遺伝子発現解析が年度内には実施できなかった。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子改変マウスの繁殖に予想以上の時間がかかったため、必要な組織サンプリングがずれ込んだ。しかし、培養細胞実験は順調に進んだことから、当初予定していたRNA-Seqによる網羅的遺伝子発現解析については多くを年度内に終えることが出来た。年度内の解析に間に合わなかった試料については、本研究課題の最終年度である平成30年度中の可及的早期に完了し、その結果を踏まえ、代謝と消化の内分泌性制御における内分泌型FGFの統合的役割の全貌解明に繋げたい。
追加のRNA-Seq解析の結果が得られれば直ちに、哺乳類の消化と代謝機能においてそれぞれ中心的役割を果たす臓器である膵臓と肝臓における、FGF19とFGF21作用の比較トランスクリプトーム解析結果とFGF19、FGF21の共通の共受容体であるbeta Klotho機能のトランスクリプトーム解析結果を照合することにより、分子のレベルの作動原理に基づいたFGF作用の機序とコンテクストを理解し、代謝と消化の内分泌性制御における内分泌型FGFの統合的役割を解明する。
前年度には遺伝子改変ラットの作製と繁殖に予想以上の時間がかかったため、研究経費の執行に遅延を生じたが、当該年度には動物飼育施設における環境変化によると思われる問題により、遺伝子改変マウスの繁殖に予想を上回る時間を要した。このことにより、当該年度内に実施予定であった組織からのRNA抽出やRNA-Seq解析が年度内に実施できず、次年度に持ち越すことになってしまい、次年度使用額が生じてしまった。しかし、実際は当該年度最終月までに予定した動物頭数が確保でき、試料採取までは完了することができたことから、次年度の早期に予定の解析を実施することが可能であると考えており、最終年度である次年度内には当初の研究計画の全体の実現が十分可能であると確信している。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
Oncotarget
巻: 9 ページ: -
10.18632/oncotarget.24367
Intern Med
巻: 印刷中 ページ: -
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Nagoya Medical Journal
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10.1038/s41598-017-00349-8
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