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2017 年度 実施状況報告書

アディポネクチンの細胞外小胞(エクソソーム)制御メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 16K09802
研究機関大阪大学

研究代表者

喜多 俊文  大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (10746572)

研究分担者 前田 法一  大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (30506308)
西澤 均  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (20379259)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードアディポネクチン / T-カドヘリン / エクソソーム / セラミド / 細胞外微粒子 / GPI-アンカー
研究実績の概要

アディポネクチン(APN)はGPIアンカー型膜蛋白T-カドヘリン(T-cad)を介して心血管保護作用を発揮することを示してきたが、T-cad蛋白には、細胞内シグナル発生に必要な膜貫通領域や細胞内ドメインがなく、その分子メカニズムは不明であった。
多量体APNは、血中の特異的かつ主要なT-cadリガンド蛋白であり、KD=1 nMの高親和性に結合し、T-cadの細胞外領域EC1及びEC2に加え、T-cadに特有のプロドメインがAPNとの結合に関与していることを明らかにした。また、T-cadカラムを作製することで、血中から効率的に多量体APNを精製する手法を確立した。(Fukuda et al., JBC 2017)
精製した多量体APNを用いた検討によって、APNは細胞表面のT-cadに結合することで、大動脈内皮細胞の内部、主にエクソソーム(Exo)産生の場であるMultivesicular bodies(MVB)に多量に取り込まれ、Exo成分として再分泌されるのみならず、Exo産生を促進し、その作用はマウスの血中Exoレベルをも規定することを見出した。さらに、APNによるExo産生促進作用は、Exoに搬出することで培養内皮細胞のセラミドを低下し、病態におけるマウス大動脈血管のセラミド蓄積を低減することを見出した。Exoは細胞内不要物の排出・除去を通じて、細胞の恒常性維持や保護に働くことが知られる。APNは定常的に血中濃度2~20μg/mLと通常のホルモン・サイトカインの1,000~1,000,000倍と非常に高濃度に存在する分泌因子である。本研究で明らかにしたAPNの新しい作用分子メカニズムは、APNの多種多彩な心血管保護作用をも説明し得る可能性がある。(Obata et al., JCI Insight 2018 in press)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究は、①アディポネクチンが集積細胞の細胞外小胞(エクソソーム)産生を促進することで、生体のエクソソームレベルを規定していることを実験的に証明し、②アディポネクチンによるエクソソーム産生制御機構を分子的に解明することで、アディポネクチンの組織修復作用を治療に応用するストラテジーを提案することにあった。
研究実績の概要に示す通り、①に関する研究を完了し、これを報告した(Fukuda et al., JBC 2017、Obata et al., JCI Insight 2018 in press)。
②に関しては①の知見に立脚し、さらに心不全や高血圧、糖尿病の病態において、T-カドヘリンの蛋白発現低下とアディポネクチンの心血管組織集積低下が惹起されていること、また同時にこれらの病態ではADAM12の顕著な発現増加があることを見出している。また細胞培養系においては、アディポネクチンの添加、ADAM12のノックダウンや阻害剤によってT-カドヘリンの切断遊離が著減し、細胞のT-カドヘリン、及びアディポネクチンの集積が増加することを見出しており、研究は興和創薬㈱との共同研究へと発展する予定である。
さらに幹細胞に発現するT-カドヘリンの機能に関しては、幹細胞のT-カドヘリンを修飾することで心不全等への幹細胞移植療法の効果が変化するか否かを、ロート製薬㈱との共同研究として進めている。

今後の研究の推進方策

①アディポネクチンによって産生促進されたエクソソームの組成成分の違いについて、miR解析(国立がん研究センター研究所 落谷先生)、脂質の網羅的解析(九州大学 生体防御医学研究所附属トランスオミクス医学研究センター 馬場先生)、プロテオミクスについて共同研究等を進めている。
アディポネクチンが如何にして心血管組織防御作用を発揮しているかを、②心血管病態、肥満糖尿病病態における組織T-カドヘリンの低下とその機序解明、③ADAM12欠損マウスを用いたT-カドヘリン切断制御機構の解析(興和創薬㈱共同研究)、④間葉系幹細胞のT-カドヘリンを介した機能維持・改善(ロート製薬㈱共同研究)、の3点から、大学院生2名と研究生1名を含む研究体制で取り組んでいる。⑤骨格筋の再生をT-カドヘリン依存的に改善することを見出しており、分子レベルからその詳細を、大阪大学薬学部深田准教授との共同研究として、大学院生1名を含む研究体制で取り組んでいる。
⑥またアディポネクチンによるT-カドヘリンの細胞膜上でのダイナミクスを、GPI-アンカー型蛋白であるT-カドヘリンの会合とエンドサイトーシス、T-カドヘリン相互作用蛋白の解析に焦点を当てて、大阪大学蛋白質研究所高木教授との共同研究として、博士研究員1名を含む研究体制で取り組んでいる。

次年度使用額が生じた理由

昨年度は、上記の研究を科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)等の助成金以外にロート製薬㈱共同研究や興和創薬㈱共同研究に伴う共同研究費、さらに大阪大学産学連携本部からの助成金等を得て進めることが出来た。
今年度は①T-カドヘリンの組織特異的、誘導型KOマウスの作出による、アディポネクチン/T-カドヘリンシステムのより詳細な解明、②切断遊離した血中T-カドヘリン定量系の開発、③アディポネクチンの神経変性疾患・脳血管障害予防治療効果とその機序、④エクソソームを介する全身的セラミド代謝循環機構の解明、⑤糖脂質代謝におけるアディポネクチン/T-カドヘリンシステムの生理病態学的意義の解明の5つの研究を新たに展開するために、翌年度分として請求した助成金を合わせて使用する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件)

  • [国際共同研究] SBP Medical Discovery Institute(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      SBP Medical Discovery Institute
  • [雑誌論文] Adiponectin/T-cadherin system enhances exosome biogenesis and decreases cellular ceramides by exosomal release2018

    • 著者名/発表者名
      Obata Y, Kita S, Koyama Y, Fukuda S, Takeda H, Takahashi M, Fujishima Y, Nagao H, Masuda S, Tanaka Y, Nakamura Y, Nishizawa H, Funahashi T, Ranscht B, Izumi Y, Bamba T, Fukusaki E, Hanayama R, Shimada S, Maeda N, Shimomura I.
    • 雑誌名

      JCI Insight

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      -

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The unique prodomain of T-cadherin plays a key role in adiponectin binding with the essential extracellular cadherin repeats 1 and 2.2017

    • 著者名/発表者名
      Fukuda S, Kita S, Obata Y, Fujishima Y, Nagao H, Masuda S, Tanaka Y, Nishizawa H, Funahashi T, Takagi J, Maeda N, Shimomura I.
    • 雑誌名

      J Biol Chem.

      巻: 292 ページ: 7840-7849

    • DOI

      10.1074/jbc.M117.780734.

    • 査読あり
  • [学会発表] Exosome-mediated vascular protection by adiponectin/T-cadherin system2018

    • 著者名/発表者名
      喜多俊文
    • 学会等名
      Cardio Renal Diabetes Conference 2018
    • 招待講演
  • [学会発表] アディポネクチンはT-カドヘリンを介してエクソソーム合成を促進し、血中エクソソーム量を正に制御する2017

    • 著者名/発表者名
      小幡佳也、喜多俊文、藤島裕也、福田士郎、長尾博文、増田重樹、田中紀實、西澤 均、前田法一、下村伊一郎
    • 学会等名
      第90回日本内分泌学会学術総会
  • [学会発表] アディポネクチン/T-カドヘリンシステムは、エクソソーム合成促進を介して細胞内セラミド含量を低下させる2017

    • 著者名/発表者名
      小幡佳也、喜多俊文、藤島裕也、福田士郎、 長尾博文、増田重樹、田中紀實、西澤 均、前田法一、下村 伊一郎
    • 学会等名
      第60回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] アディポネクチン結合蛋白T-カドヘリンのメタロプロテアーゼADAM12による切断制御2017

    • 著者名/発表者名
      喜多俊文、小幡佳也、藤島裕也、福田士郎、長尾博文、増田重樹、田中紀實、西澤 均、船橋 徹、前田法一、下村伊一郎
    • 学会等名
      第60回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] アディポネクチンがT-カドヘリンに結合する部位と、その増加作用に関する考察2017

    • 著者名/発表者名
      福田士郎、喜多俊文、増田重樹、小幡佳也、田中紀實、長尾博文、藤島裕也、西澤 均、船橋 徹、前田法一、下村伊一郎
    • 学会等名
      第60回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] テストステロン欠乏下での骨格筋T-カドヘリンの遺伝子発現、アディポネクチン集積の制御に関する検討2017

    • 著者名/発表者名
      田中紀實、喜多俊文、西澤 均、福田士郎、長尾博文、小幡佳也、増田重樹、藤島裕也、前田法一、下村伊一郎
    • 学会等名
      第60回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] アディポネクチン/T-カドヘリンによるエクソソーム産生促進とその病態生理学的意義2017

    • 著者名/発表者名
      小幡佳也
    • 学会等名
      第22回アディポサイエンス・シンポジウム
  • [学会発表] アディポネクチンによるエクソソーム制御2017

    • 著者名/発表者名
      喜多俊文
    • 学会等名
      平成29年度自然科学研究機構 生理学研究所研究会
  • [学会発表] アディポネクチンのT-カドヘリンを介したエクソソーム調節機構の解明2017

    • 著者名/発表者名
      小幡佳也、喜多俊文、藤島裕也、福田士郎、長尾博文、増田重樹、田中紀實、西澤 均、船橋 徹、前田法一、下村伊一郎
    • 学会等名
      第38回日本肥満学会
  • [学会発表] シンポジウム「アディポサイトカイン学up to date」T-カドヘリンを介するアディポネクチンの臓器保護作用メカニズム2017

    • 著者名/発表者名
      喜多俊文
    • 学会等名
      第38回日本肥満学会
  • [学会発表] 骨格筋再生におけるアディポネクチン・T-カドヘリンの役割についての検討2017

    • 著者名/発表者名
      田中紀實、喜多俊文、西澤 均、清水有理、嶺尾良平、増田重樹、小幡佳也、長尾博文、福田士郎、藤島裕也、前田法一、船橋 徹、下村伊一郎
    • 学会等名
      第38回日本肥満学会
  • [学会発表] T-カドヘリンにおけるアディポネクチン結合部位、およびプロドメインの重要性2017

    • 著者名/発表者名
      福田士郎、喜多俊文、小幡佳也、藤島裕也、長尾博文、増田重樹、田中紀實、西澤 均、船橋 徹、前田法一、下村伊一郎
    • 学会等名
      第38回日本肥満学会
  • [学会発表] シンポジウム「エクソソームと心血管疾患」脂肪由来内分泌因子アディポネクチンとGPIアンカー型膜蛋白T-カドヘリンによるエクソソーム生合成制御を介する心血管代謝調節機構2017

    • 著者名/発表者名
      喜多俊文
    • 学会等名
      CVMW2017 心血管代謝週間
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-21  

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