研究課題/領域番号 |
16K09803
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
木村 真希 (小柳真希) 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (40623690)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | mTORC1 / DPP-4阻害薬 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病の病態はインスリン作用不足であり、インスリン分泌障害とインスリン抵抗性に原因があると考えられている。膵β細胞障害がインスリン抵抗性とともに2型糖尿病早期から認められること、さらに膵β細胞障害の憎悪が病態の進展を規定することも明らかとなってきた。なかでも、膵β細胞量の減少が2型糖尿病を発症させるという概念が提唱されている。これまでに、我々のは膵β細胞量調節におけるインスリンシグナルの重要性を明らかにしてきた。 本研究では、現在臨床現場で使用されている血糖降下作用を有する薬剤がインスリンシグナルの下流に位置するTSC2を膵β細胞特異的に欠損させたマウス(βTSC2-/-マウス)の代謝パラメータに与える影響およびそのメカニズムの解明することを通じてmTORC1活性を適正範囲内に調節する薬剤を同定することが目的の一つであり、DPP-4阻害薬MK-626がβTSC2-/-マウスの膵β細胞量に及ぼす影響について検討した。 DPP-4阻害薬MK-626がβTSC2-/-マウスの代謝パラメータに及ぼす影響を検討するため、4週齢から12週齢までMK-626を混餌投与し、体重・随時血糖値・随時インスリン値を測定した。全ての群において体重に有意な差は認められなかった。次に12週齢における経口糖負荷試験および膵β細胞量にMK-626は影響するのかについて検討した。経口糖負荷試験は、随時血糖値・随時インスリン値と同様にβTSC2KOマウスは野生型マウスに比べて有意な低血糖、高インスリン血症を呈したが、MK-626投与による変化は認められなかった。膵β細胞量は、βTSC2KOマウスは野生型マウスに比べて有意に膵β細胞量が増加したが、MK-626投与によるさらなる変化は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗糖尿病薬の一つであるDPP-4阻害薬をβTSC2-/-マウスに投与し、各種代謝パラメータおよび膵β細胞量を評価することは当初からの計画の一つであり、結果を得られ順調に進行しているが、他の抗糖尿病薬を用いた同様の検討は現在条件設定のための実験中であり、すべての結果を得られていない。
|
今後の研究の推進方策 |
2型糖尿病の病態はインスリン作用不足であり、インスリンの分泌障害とインスリン抵抗性に原因があると考えられている。中でも、膵β細胞量を維持する機構の破綻により膵β細胞量が減少することが2型糖尿病を発症させるという概念が提唱されている。 今年度の実験結果より、MK-626はβTSC2-/-マウスの代謝パラメータに影響を与えなかったが、MK-626の投与をさらに高週齢まで行う。MK-626投与による糖尿病発症の時期が遅延するかどうか、また通常飼育下で糖尿病を発症する週齢におけるMK-626投与βTSC2-/-マウスの膵β細胞量および膵島におけるmTORC1活性・インスリンシグナル関連分子の発現を通常飼育下βTSC2-/-マウスと比較検討する。また通常飼育下βTSC2-/-マウスの膵島との間でDNAマイクロアレイ法を用いて網羅的遺伝子発現解析を行う予定である。同様の検討を他の抗糖尿病薬においても実現できるように、現在、使用薬剤の選定に必要な各種条件を模索している。 また、通常飼育下のβTSC2-/-マウスの検討によると、βTSC2-/-マウスのインスリンシグナルは若週齢の時期よりネガティブフィードバックを受け抑制されている。しかしながらその後も膵β細胞量は維持され高週齢まで糖尿病を発症しないことより、若齢期と高齢期のβTSC2-/-マウス膵島の発現タンパクを網羅的に比較解析し、変化を認める遺伝子が膵β細胞量を減少させる可能性を検討する。βTSC2-/-マウスが、高脂肪食負荷により耐糖能異常にどの程度影響を受けるかを検討し、糖尿病発症へと直結するmTORC1活性亢進の程度を明らかにするための研究も推進していく予定である。
|