• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

血糖降下薬がmTORC1調節を介して糖尿病発症抑制効果を示す可能性に関する検討

研究課題

研究課題/領域番号 16K09803
研究機関神戸大学

研究代表者

木村 真希 (小柳真希)  神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (40623690)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードmTORC1
研究実績の概要

2型糖尿病患者の膵β細胞量は発症前から減少していることが明らかとなり、糖尿病発症予防のために膵β細胞量の維持が望まれる。近年、新規薬の相次ぐ登場により様々なメカニズムで血糖値を改善させることが可能であるが、糖尿病発症予防薬として確固たる地位を築いている薬剤はない。代表者はこれまでに高脂肪食負荷GCN2欠損マウスを用いた検討により、膵β細胞におけるmTORC1シグナル調節が膵β細胞量維持に必要であることを明らかにした。
本研究では、膵β細胞におけるmTORC1シグナルがどのようなシステムで維持、あるいは破綻するのかを検討することにより、膵β細胞保護効果をもつ薬剤を探索することが目的である。まず代表者は、GCN2欠損によりmTORC1シグナルが亢進する機序について解析を開始した。その結果、GCN2の下流に存在するREDD1、GADD34、SESN2の3分子が鍵分子として候補に上がった。GCN2欠損マウスの膵島における発現を確認した結果、SESN2のみが有意に発現低下していることが明らかとなった。SESN2のノックダウンによって、膵β細胞株のmTORC1活性は有意に亢進した。さらにSESN2の発現ベクターを導入することにより、mTORC1シグナルの抑制に伴った細胞増殖能の回復が認められた。これらの結果より、SESN2はmTORC1活性亢進に伴う膵β細胞不全において、治療標的分子となることが示唆された。また最近代表者は、Tsc2ノックアウトマウスの膵島において、脱分化が亢進していることも新たに見出している。糖尿病状態では膵β細胞の脱分化が亢進してα細胞になることが知られているが、Tsc2ノックアウトマウスの膵島では、高血糖以前の段階で脱分化が始まっていた。膵β細胞不全の治療評価として、「脱分化抑制」を考慮しつつ、今後検討を重ねたいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

GCN2欠損マウスを用いた解析により、今回SESN2を治療標的として同定することに成功した。今後は膵β細胞におけるSESN2の発現や活性化を調節する抗糖尿病治療薬について解析を進めたい。また、Tsc2ノックアウトマウスを用いた解析では、膵β細胞における脱分化が確認され、こちらについても今後治療標的として十分有用な因子と考えている。

今後の研究の推進方策

GCN2ノックアウトマウスを用いた解析では、膵島におけるSESN2の発現量低下が膵β細胞不全の原因と考えられた。今後は抗糖尿病治療薬によってSESN2の発現量が回復するかどうかについて検討を進めていく予定である。またTsc2ノックアウトマウスに関しては、早期からの脱分化を抑制するような薬剤を同定することを目標として、各種解析を行っていく。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Casein kinase 2 phosphorylates and stabilizes C/EBPβ in pancreatic β cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Takai T, Matsuda T, Matsuura Y, Inoue K, Suzuki E, Kanno A, Kimura-Koyanagi M, Asahara SI, Hatano N, Ogawa W, Kido Y.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 497 ページ: 451-456

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2018.02.108.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Histone deacetylase regulates insulin signaling via two pathways in pancreatic β cells.2017

    • 著者名/発表者名
      Kawada Y, Asahara SI, Sugiura Y, Sato A, Furubayashi A, Kawamura M, Bartolome A, Terashi-Suzuki E, Takai T, Kanno A, Koyanagi-Kimura M, Matsuda T, Hashimoto N, Kido Y.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 12 ページ: e0184435

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0184435. eCollection 2017.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 膵β細胞の小胞体ストレス誘導性アポトーシスにおけるCK2βの役割2017

    • 著者名/発表者名
      高井智子、松田友和、井上佳歩、松浦有希、鈴木江美、神野歩、木村真希、淺原俊一郎、小川渉、木戸良明
    • 学会等名
      第60回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 脂肪酸が膵β細胞の小胞体に及ぼす影響2017

    • 著者名/発表者名
      鈴木江美、松田友和、川本剛士、松浦有希、高井智子、神野歩、木村真希、淺原俊一郎、小川渉、木戸良明
    • 学会等名
      第60回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] ヒトiPS細胞を用いた2型糖尿病発症機序の解明2017

    • 著者名/発表者名
      下野名奈子、淺原俊一郎、原瑞季、田中孝一、松田友和、木村真希、神野歩、高井智子、鈴木江美、青井貴之、木戸良明
    • 学会等名
      第60回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 膵β細胞の小胞体ストレス誘導性アポトーシスにおけるCK2βの役割2017

    • 著者名/発表者名
      井上佳歩、高井智子、松田友和、鈴木江美、神野歩、木村真希、淺原俊一郎、木戸良明
    • 学会等名
      第40回分子生物学会年会
  • [学会発表] 高脂肪食負荷GCN2欠損マウスの膵島におけるmTORC1シグナル調節機構の解明2017

    • 著者名/発表者名
      古林鮎子、神野歩、増田勝久、吉富理紗、木村真希、松田友和、淺原俊一郎、木戸良明
    • 学会等名
      第40回分子生物学会年会
  • [学会発表] ヒトiPS細胞を用いた膵内分泌細胞への分化誘導法の確立2017

    • 著者名/発表者名
      山田瑞姫、淺原俊一郎、下野名奈子、田中孝一、松田友和、木村真希、神野歩、高井智子、鈴木江美、青井貴之、木戸良明
    • 学会等名
      第40回分子生物学会年会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi