研究課題/領域番号 |
16K09804
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松瀬 美智子 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (30533905)
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研究分担者 |
光武 範吏 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (50404215)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 甲状腺癌 / TERT |
研究実績の概要 |
TERTプロモーター変異のクローナリティの解析 近年、甲状腺癌の中でも悪性度の高い低分化癌や未分化癌では同一癌組織中の全ての癌細胞にTERTプロモーター変異が検出される(クローナル)のに対し、悪性度の低い乳頭癌では一部の癌細胞にのみ変異が検出される(サブクローナル)ことが報告され、この変異と甲状腺癌の悪性転化との関連が示唆されている(Landa JCI 2016)。我々は甲状腺乳頭癌において高頻度に検出されるドライバー変異であるBRAFV600Eをがん細胞の指標とし、デジタルPCR法にてTERTプロモーター変異のクローナリティについて解析したところ、同一癌組織中におけるこの変異のある癌細胞の割合は平均49.1%であり、甲状腺乳頭癌では同一癌組織中の一部の癌細胞にこの変異があることを確認した。さらにこの方法で、通常のキャピラリー電気泳動を用いたサンガーシーケンス法では検出できないような存在比率の低い変異を検出することに成功した。
TERTプロモーター変異とmRNAの発現量との関連 TERTは通常体細胞では発現が認められないが、TERTプロモーター変異により転写因子の新たな結合領域ができることでTERTの転写が活性化されると考えられている。この変異の有無とmRNAの発現量との関連を検討したところ、変異のある全てのPTC症例でmRNAの発現を認めた。しかし変異のない症例のうちおよそ3割の症例においてmRNAが発現していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
甲状腺乳頭癌におけるTERTプロモーター変異のクローナリティについて明らかにすることができた。さらに通常のキャピラリー電気泳動を用いたサンガーシーケンス法では検出できないような存在比率の低い変異を検出することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
存在比率の低いTERTプロモーター変異とmRNAの発現量との関連 本年度は通常のシーケンス法でTERTプロモーター変異が検出されなかった症例のうちTERT mRNAの発現を認めた症例を用いて、より感度の高いデジタルPCR法にて存在比率の低い変異の有無を確認する予定である。 TERTプロモーター領域におけるDNAのメチル化とmRNAの発現量との関連 小児の脳腫瘍において、TERTプロモーター領域におけるDNAのメチル化がTERTの発現亢進を誘発し、癌の悪性度と関連することが報告されている(Castelo-Branco Lancet Oncol 2013)。TERTプロモーター変異が検出されなかった症例のうちTERT mRNAの発現を認めた症例ではこの領域のDNAのメチル化がTERTの発現亢進に関与しているのか検討する。TERTプロモーター変異やmRNAの発現の有無との関連も検討する予定である。予備実験としてバイサルファイトシーケンスにより、この領域のメチル化の検出には成功している。
以上を総合して、TERTプロモーター変異、DNAのメチル化、mRNAの発現亢進とPTCの悪性度との関連について検討し、どれが再発・転移を来す悪性度の高い甲状腺乳頭癌を推定できる優れた指標となるか検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) TERTプロモーター変異のクローナリティ及びmRNAの発現量の解析では、条件検討の結果、ddPCRやリアルタイムRT-PCRの費用を大幅に抑えることができた。 (使用計画) TERTプロモーター領域におけるDNAのメチル化について解析するための物品費として使用する予定である。
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