研究課題/領域番号 |
16K09812
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
神田 武志 慶應義塾大学, 保健管理センター(日吉), 講師 (80317114)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グレリン / 内皮細胞 / 肥満 |
研究実績の概要 |
グレリンは、血圧を低下させ脂肪重量を増加させ、更にグレリン受容体(GHSR)欠損マウスは、野生型マウスに比べて血圧高値および脂肪量減少を呈することが報告されている(Plos One 2014, JCI 2005)。血管内皮細胞は血圧、白色脂肪組織(WAT)における脂質輸送を調節しており、内皮細胞におけるGHSRの血圧、脂質蓄積制御における役割を検討した。 Cre-LoxPシステムを用いてGHSR欠損マウスの内皮細胞に選択的にGHSRを発現させたマウス(GHSR-ECマウス)を作成し、GHSR欠損マウスと野生型マウスと比較した。血圧はカフ法により測定した。16時間の空腹後にOlive oilを経口投与し血中脂質の推移を測定した。 GHSR欠損マウスは、野生型マウスと比較して、血圧の上昇を示した(142.1±3.6 mmHg vs 126.7±2.6 mmHg)。GHSR-ECマウスと野生型マウスの間に有意差はなかった、血圧(132.9±2.6 mmHg)。 GHSR欠損マウスでは、Olive oil経口投与後の血清FFAとTGは野生型マウスと比較して有意に増加した。WATの重量は高脂肪食下のGHSR欠損マウスにおいて優位に減少し、GHSR-ECマウスではWATへの脂質取込みが回復し重量は増加した。 グレリンは内皮GHSRを介して隣接臓器へFFAの取り込みを増加させることが示唆された事からグレリンの血管内皮細胞におけるFFAの取り込みに関する遺伝子発現を検討した。マウス培養内皮細胞をグレリンで刺激した所、FFAの取り込みに重要なPPARγさらにその下流遺伝子であるaP2の発現上昇が認められ、グレリンが肝臓においてPPARγの発現を上昇させ、脂肪肝惹起作用を有する報告と一致した(PNAS 2014)。 以上により内皮細胞におけるGHSRは、内皮機能に重要な役割を果たし、グレリンに応答して、血圧および代謝応答を調節することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GHSR欠損マウスと内皮細胞特異的Cr発現マウスの交配により内皮特異的にGHSRを発現するマウスの作出を行っている。しかし交配がすすまず、得られたマウスの数が限られており、実験がやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
野生型マウスとGHSR欠損マウスの心臓から血管内皮細胞を培養し、RI標識されたFFAの取り込み量を測定する。従来マウスからの血管内皮細胞の培養は肺・心臓の微小血管内皮細胞より行われてきたが、申請者らは脂肪組織の血管内皮細胞を培養する事を可能にしている。内皮細胞は隣接する臓器により性質が異なることから、脂肪組織由来の血管内皮細胞においてもFFAの取り込み量を測定する。内皮にのみ発現が認められ、LPLの補酵素であるGpihbp1等の遺伝子発現を培養細胞、並びにFACSで分取した内皮細胞で測定する。以上の検討により内皮グレリンGHSRシグナルによるFFA取り込み調節やLPL活性調節機序を明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のとおり、内皮特異的GHSR発現マウスの作出が不十分であり、in vivoの実験がすすまなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していたin vivoの解析(脂肪組織の評価、血中リポタンパクの評価、血中アディポカインの評価、代謝測定、RI実験)などを行う。
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