研究課題/領域番号 |
16K09813
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
飯利 太朗 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90313022)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 内分泌学 / Gタンパク質共役受容体 / GPCR / クロストーク |
研究実績の概要 |
GPCRシグナルの高次調節機能を担う細胞内/細胞間クロストークの詳細を明らかにし、シグナル制御による疾患に対する治療法開発をめざすという観点で研究を行っている。 1)臓器保護/臓器障害に関与するGs・Gq/13共役受容体のクロストークとその場であるRho制御解明と応用: 私共は、Gq/G13共役受容体に対するGs共役受容体シグナルのクロストークを検討し、以前から指摘されているRhoのリン酸化ではなくRhoGDIのリン酸化が活性型Rhoの抑制を介してシグナル抑制のに作用することを明らかにした。現在、Rhoのリン酸化は細胞内でどのように調節されるかを検討している。Rhoの翻訳後修飾との相関・クロストークにによって調節される可能性を発見した。また、疾患におけるGs共役受容体の変異解析の一環で新たな変異を発見するとともに変異による機能障害を回復させる薬理学的シャペロンとして機能する薬剤を明らかにし、論文として発表した。 2)GRK2ニトロシル化(NO化)と脱感作抑制をターゲットとする創薬の展望: 私共は、GPCRの脱感作を担うGRK2のNO化が、GRK2の活性を抑制し、その結果脱感作を抑制することを明らかにしてきた。そのツールとして作成したNO化化合物の構造活性相関を検討し、GRK2上のシステインの中でcys174が特異的な作用点となることがあきらかとなった。さらに、具体的な場として、脂肪細胞を用いた検討で、β受容体による脂肪酸産生を増強することが観察された。NO化を指標とする構造活性相関との比較検討を行っており、脂肪分解を増強する創薬への貢献が期待される。 3)炎症モデルへの応用:ARBのインバースアゴニスト作用及び抗炎症作用について比較検討を行い、論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)Gs共役受容体シグナルとGq/G13シグナルのクロストークのメカニズムを明らかにしつつある。 (2)Gs共役受容体の疾患における新たな変異とレスキューする薬剤の作用機構を示した(JBC 291:22460, 2016) (3)GPCR脱感作を制御するGRK2のNO化を生じる合成化合物の作用を検討している。 (4)炎症モデルにおいてARBの作用を明らかにした(EJ 63:507, 2016)
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今後の研究の推進方策 |
(1)RhoおよびRhoGDIのリン酸化によるシグナル制御と相互作用によるクロストークを明らかにする(当初計画通り)。 (2)脱感作抑制とGRKのニトロシル化作用を有する合成化合物の構造活性相関を検討する。 (3)炎症モデルでの検討を進めるとともに、GPCRシグナル制御を構造解析の視点から解析し、創薬を展望する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究時期が年度後半からに集中したためと、一部の購入物品の納入が年度をまたいだため。
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次年度使用額の使用計画 |
1)後ろ倒しとなった研究に対して物品費の使用が予定されている。 2)一部の納入遅れを生じた物品の納入が予定されている。
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