研究課題/領域番号 |
16K09814
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
西 芳寛 久留米大学, 付置研究所, 研究員 (20352122)
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研究分担者 |
佐藤 元康 獨協医科大学, 医学部, 助教 (20418891)
細田 洋司 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40359807)
御船 弘治 久留米大学, 医学部, 准教授 (70174117)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射線障害 / グレリン / 骨髄抑制 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
本研究の1年目の研究計画に従って、以下5項目中の3項目について測定を完了した。①. X線照射マウスの血中・組織内グレリン量の測定:血中の活性型グレリン濃度は3GyのX線照射(X-ir)後 day7 を中心に有意の一過性上昇を示し、その後 day14,21 にかけて低下した。day21-30 にかけては緩やかに上昇して照射前のレベルに復した。血中の総グレリン濃度は、照射後 day7-30の全測定日で照射前の血中レベルより有意に上昇した。今回の検討で初めて、活性型グレリンと総グレリン分泌動態に相違があることが判明した。②. X-ir 3Gy の培養ヒトリンパ球に照射前・後で1x10-8M のグレリンを添加すると、照射後4-6時間での培養リンパ球の生存率は、非添加の30%前後から添加後は40-60%へと有意に上昇した。リンパ球の生存率は照射前投与が照射後投与より有効であった。③. X-ir 3Gy の全身照射マウスでは末梢血のRBC数・WBC数ともに照射後 day3-5 をボトムとして有意な血球数減少が確認された。WBC中では好中球・リンパ球ともに有意な血球数の減少が確認され、両者ともに照射後の連日4日間のグレリン投与(5 micro-g/body/回)で有意は血球減少の抑制効果が確認された。末梢血 RCB数の減少についても上記のグレリン投与量で有意な血球減少の抑制が確認された。④.放射線誘発性白血病モデルマウスの実験については、本申請者の部署移動はかに伴い(下記の「現在までの進捗状況」に記載あり)飼育環境の設定が進まず、測定系が動いていない状態である。⑤.X-ir マウス造血幹細胞へのグレリン添加による保護効果の検討についてもコロニーアッセイの解析は進んでいない。上記①-③の研究成果については、H,28年度の日本内分泌学会で報告をすませ、今後この内容で論文報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の「研究実績の概要」に記載した①-③に関しては、追加解析でも同様の結果が再現されており、今後の学会報告~論文作成が可能なレベルまで到達している。ほぼ順調な展開と考える。その一方で、上記④,⑤については、申請書作成・提出時に予期できなかった申請者自身の研究環境の変化のために、病態モデルマウスの飼育・繁殖など、研究の準備・進行が遅れている。この両者を鑑みて、区分(3)「やや遅れている」とした。
具体的には、本研究の申請時点の久留米大学医学部・生理学講座(講師)から久留米大学・分子生命科学研究所(研究員)へと所属・職位が変更となり、研究代表者の研究環境が大きく変化したことと、熊本震災における被災者への医療支援業務に就いたことにより、当初の計画より研究時間が制限されることとなった。これら2つの理由により、本計画の申請当初の想定より研究進行が遅れている。但し、本報告書の作成時点(H.29年 5月)では、研究代表者による各種の調整と、分担研究者・所属大学からのサポートにより、昨年度(H.28年度)より研究時間が確保できる環境となっている。
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今後の研究の推進方策 |
新しい研究環境の下で期間内に一定の成果を上げるために、研究申請書の作成当初の広範囲に渡る研究計画から、今後、いくつかの項目に絞り込む形で研究計画の再編成を行う。
具体的には、H.29年度以降は以下①-③の研究項目について重点的に検討する。①.X線照射・培養リンパ球に対するグレリンの血球保護効果の機序の解析。②.骨髄前駆細胞・幹細胞に対する放射線障害へのグレリンの保護効果の確認。③.グレリンの活性化調節への放射線障害の影響(全照射マウスを用いた検討)。さらに、これら①-③の解析結果に基づいた論文作成の準備を、繰り上げて早めに開始する。その一方で、本研究申請の当初に計画していた「疾患モデルマウス」(放射線障害性白血病・リンパ腫発症マウス)に対するグレリン投与の影響については、優先順位を低くする方向で進めていく。また、上記の研究計画 ①,② については、学外の分担研究者とも緊密に連携して、より効率的に解析が進むように調整する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度(H.28年度)に、本計画の申請書を作成した当初に予想されていなかった「研究環境の変化」(所属部署・役職の変更)が起こり、新しい研究環境の立ち上げに相当の時間を費やすこととなった。この関係で、学外の分担研究者の研究は特に問題なく遂行されたが、研究代表者の研究業務に遅れが生じ、研究関連物品・消耗品の購入計画にも相応の遅れが生じた。更に、学内の研究協力者が産休に入ったため(H.28年 4月~H.29年 3月)この分の研究計画に関連した物品・消耗品の購入にも遅れが生じた。上記の学内研究協力者は、H.29年 4月より学内の業務(以前の研究環境)に復帰しており、次年度には、ほぼ順調な物品購入・使用が可能と考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
H.28年度に購入を計画していた「ポリトロン・ホモジナイザー」関係の出費は、同等金額の物品(ホモジナイザー、電気泳動槽ほか)の購入に充てる。研究に必須のラジオアイソトープ関連の消耗品、ペプチド合成品、チップ・チューブ関係の消耗品の購入も、次年度以降で計画的に進めていく。昨年度は、申請者本人の学会報告・参加が実質2回に留まっており、国際学会への参加・学会発表も無かったため、内分泌・放射線障害の関連学会での報告を積極的に進めるために、前年度の残額を有効に利用していく。
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