研究実績の概要 |
我々はヒト症例で46,XY核型を持ち卵巣成分をもつ性分化症例に遭遇した。この症例については既知の性分化疾患の原因遺伝子24種類の異常がないことを次世代シークエンサーでの解析で確認した。その後、この症例のエクソーム解析の結果を、マウス野生型46,XX, 46,XY個体、卵巣発生がみられるSryノックアウトマウス個体の胎生11-15週の性腺での網羅的発現解析と比較し、本症例での疾患責任遺伝子の候補を抽出した。すなわち、胎児期の性腺で発現があり、46,XY個体に比べ、46,XX個体、Sryノックアウト個体でその発現が1.5倍以上、あるいは0.7倍以下になっているもののうち、患児で多型サイトには登録されていない塩基バリエーションをもつ遺伝子を抽出した。
今年度は抽出された遺伝子のなかで、患児で両アリル性にナンセンス変異を認めている遺伝子(A)について注目した。この遺伝子のノックアウトマウス、遺伝子・タンパク質レベルでの機能の報告はない。
まず、はじめに患児で同定している変異候補を有するマウスの作製をゲノム編集により試みた。変異候補周辺配列のオリゴDNAとsgRNAとCas9をマウス受精卵に顕微注入し、偽妊娠マウスに胚移植した。生まれたマウス 124頭中1頭で目的の塩基置換が確認された。また同時に変異候補周辺を欠損しているマウスも得ることができた。ホモに変異を持つマウスを掛け合わせにより得て、表現型解析を行った。マウス個体での外性器の観察では、46,XX, 46,XY共に、また、両アリル性の患児と同一の変異を持つマウス、両アリルの欠失マウスともに異常がなかった。
|