研究課題
46,XYの核型を持つヒトでの、組織学的に精巣成分を認めず、卵巣成分(卵胞)が存在する現在まで報告のない症例に関する研究である。この症例では既知の主要な性分化疾患の責任遺伝子変異は次世代シークエンサーを用いた包括的変異解析から否定され、卵巣成分を持つことは組織免疫学的検討、精巣のマーカーであるSOX9が陰性、卵巣のマーカーであるFOXL2が陽性であることからも確認された。この児、および両親の3名のExome解析の結果を、マウス胎仔Sry発現のデータとともに解釈して原因遺伝子を特定する研究を平成28年度から行ってきた。すなわち、野生型マウス胎仔Sry発現のピークである胎齢10.5~11.5と共に、胎齢13.5のgonadal ridge (fetal gonad)に発現があること、卵巣発生がみられる上述したSryノックアウトマウスで発現が胎齢13.5において野生型オスと比べ50%以上に低下 すること、あるいは野生型メスに比べて200%以上に増加することを指標とし、上記3名のExome解析でのヴァリエーションの中から、遺伝子3つを我々の症例での疾患候補遺伝子として抽出した。この3つの遺伝子については、現在まで、ヒト疾患、ノックアウトマウスでの報告はなく、性分化に関係した研究も行われていないため、ノックアウトマウスの作成を行った。このマウスモデルでは、いずれも性分化に関係する表現型が見られないことを確認し、その段階で(1)これらの3つの遺伝子は我々の46,XY DSD症例の原因遺伝子ではない、(2) マウスの原始性腺を利用する我々の手法は、ヒト疾患の解析に妥当な方法ではないと考えた。
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J Clin Endocrinol Metab
巻: ePub ahead ページ: ePub ahead
10.1210/jc.2018-01752
Sex Dev
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10.1159/000489451