過食と消費エネルギー低下により生じる肥満は、インスリン抵抗性や糖尿病、脂質異常症、高血圧等の生活習慣病を発症する主要な危険因子であり、これらの集積が動脈硬化疾患の発症・進展に大きく寄与する。近年、低分子量GTP結合タンパク質Rhoのエフェクター分子であるRhoキナーゼ(ROCK)がインスリン及びレプチンシグナルを制御することにより、心血管疾患を含めた生活習慣病において重要な役割を果たすことが相次いで報告されている。 生理活性ペプチドをリガンドとする受容体の多くはGタンパク質共役型受容体(GPCR)であり、内因性リガンドの不明なオーファンGPCR遺伝子が数多く存在する。リガンドが結合したGPCRは共役するGタンパク質によって異なる細胞内シグナルを伝達する。Gα12/13に共役するGPCRはRho-ROCK経路を活性化するが、高感度かつ効率的な活性検出は困難であった。そのため、GPCRを受容体とするROCK活性化因子やGα12/13シグナルからROCKを介したインスリン・レプチンシグナルへのクロストーク、それに伴う肥満及び糖脂質代謝改善に対する検証は遅れている。 本研究では、摂食やエネルギー代謝、糖脂質代謝を制御する未知の生理活性ペプチドを同定し、細胞や個体レベルでの機能解析を行い、新たな食欲・脂肪蓄積調節機構を解明することを目的とする。 平成30年度は、Gα12/13シグナルを検出するためにTGFα切断アッセイ及びCellKeyシステムを活用し、オーファンGPCRに対する内因性リガンド探索を実施した。その結果、GPCR-X発現細胞に対する強いインピーダンス変化を複数の組織抽出物より検出した。今後、活性画分をHPLCによる分離を行い、得られた活性の標的受容体に対する特異性を検証する。
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