研究実績の概要 |
再生不良性貧血は造血細胞の減少と脂肪髄という特徴的所見を呈する難治性の造血不全症である。転写因子GATA-2は造血幹細胞及び間葉系幹細胞の機能において重要な役割をもつが、近年申請者らのグループはこの両者における転写因子GATA-2の発現低下が、造血細胞の減少と脂肪髄という二つの異常形質をもたらすことを見出した。しかしながら、再生不良性貧血におけるGATA-2発現低下の機序については共通の上流因子の影響か、あるいは間葉系幹細胞におけるGATA-2発現低下であるか不明である。そこで、本研究では間葉系幹細胞特異的Gata2ノックアウトマウスの解析を通じて、再生不良性貧血の病態の一端を解明することを目指す。 平成28年度は、Gata2コンディショナルノックアウトマウスの作製を行った。間葉系幹細胞選択的にGata2をノックアウトする方法として、Cre-loxPシステムを用いた組織選択的ノックアウトを用い、Creを発現させるプロモーター領域としては、マウス間葉系幹細胞において高発現しているとされるNestin、Prrx1、Lepr遺伝子を選択した。平成28年度は、これらのプロモーター制御下にGata2をノックアウトさせるマウス(Nestin-Cre-ER; Gata2flox/floxマウス、Prrx1-Cre; Gata2flox/floxマウス、Lepr-Cre; Gata2flox/floxマウス)の系統をそれぞれ確立させた。陽性マウスの確認においては、各々のマウスの系統を作成した後、間葉系幹細胞特異的にGATA-2が欠損しているか検討する目的で、マウス大腿骨及び脛骨の骨髄細胞から間葉系幹細胞分画(CD45-Ter119-CD31-)をフローサイトメーターで回収し、ゲノムDNAを用いたPCRでの確認を行った。Nestin-Cre-ER; Gata2flox/floxマウスについては、タモシキフェン1μgの腹腔内投与をDay1,2,3,8,9,10に行い、Day20,21,22の間に解析を行った。
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