研究課題
我々は間葉系幹細胞におけるGATA-2の発現低下が造血幹細胞の支持能を低下させうることをin vitroの検討により見出した。そこで本研究計画では、間葉系幹細胞特異的Gata2ノックアウトマウスの解析を通じて、間葉系幹細胞でGATA-2の発現低下を呈することが知られている再生不良性貧血の病態の一端を解明することを目的とした。平成29年度は、マウス間葉系幹細胞において高発現しているとされるNestin、Prrx1、Lepr遺伝子の制御下にCre-loxPシステムを用いてGata2をノックアウトさせるマウス(Nestin-Cre-ER; Gata2flox/floxマウス、Prrx1-Cre; Gata2flox/floxマウス、Lepr-Cre; Gata2flox/floxマウス)をそれぞれ樹立し、血算・造血幹細胞比率・コロニーアッセイ・骨髄の病理学的検討を行ったが、いずれにおいても明らかな形質の違いを認めなかった。上記の結果より、1つの間葉系幹細胞マーカーでは骨髄内全ての間葉系幹細胞をカバーするのは不十分であると考え、正常マウス由来の骨髄細胞をGata2コンディショナルノックアウトマウスに移植し、生着後にGata2をノックアウトさせる事で、より広く造血微小環境のGata2を欠損する環境を作成した。その結果、Gata2のノックアウトにより、対照と比較して骨髄球性共通前駆細胞(common myeloid progenitor:CMP)の割合の有意な低下とリンパ系共通前駆細胞(common lymphoid progenitor: CLP)の増加傾向(p = 0.08)を認めた(Hasegawa et al. Experimental Hematology 2017)。
2: おおむね順調に進展している
当初計画したNestin、Prrx1、Lepr遺伝子の制御下にCre-loxPシステムを用いてGata2をノックアウトさせるマウス(Nestin-Cre-ER; Gata2flox/floxマウス、Prrx1-Cre; Gata2flox/floxマウス、Lepr-Cre; Gata2flox/floxマウス)においては期待した結果が得られなかったものの、正常マウス由来の骨髄細胞をGata2コンディショナルノックアウトマウスに移植し、生着後にGata2をノックアウトさせる事で、より広く造血微小環境のGata2を欠損する環境を作成することで、in vivoの間葉系幹細胞の造血支持におけるGATA-2の重要性を示唆する結果を得たため。今後、Nestin-ER-Cre、Prrx1-Cre、Lepr-Creの複数のプロモーターの組み合わせの制御下にGata2を欠損させるマウスの構築を進めており、平成30年度中に解析を終了させる事を目指している。
正常マウス由来の骨髄細胞をGata2コンディショナルノックアウトマウスに移植し、生着後にGata2をノックアウトさせるという実験系では、造血系細胞以外の全ての細胞におけるGata2を欠損させるため、間葉系幹細胞以外の細胞におけるGata2の欠損の影響も否定できない。また移植の実験では、Gata2ノックアウト後の長期における観察が困難である。そこで現在、Nestin-ER-Cre、Prrx1-Cre、Lepr-Creの複数のプロモーターの組み合わせの制御下にGata2を欠損させるマウスの構築を進めている。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
The Tohoku Journal of Experimental Medicine
巻: 244(1) ページ: 41-52
10.1620/tjem.244.41
Biochemistry and Biophysics Reports
巻: 11 ページ: 105-111
10.1016/j.bbrep.2017.07.006
Experimental Hematology
巻: 56 ページ: 31-45
10.1016/j.exphem.2017.08.004
Annals of Hematology
巻: 96(11) ページ: 1955-1957
10.1007/s00277-017-3106-7
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 485(2) ページ: 380-387
10.1016/j.bbrc.2017.02.068
巻: 49 ページ: 56-67
10.1016/j.exphem.2017.01.002
Stem Cells
巻: 35(3) ページ: 739-753
10.1002/stem.2499
http://www.rh.med.tohoku.ac.jp/index.html