研究課題/領域番号 |
16K09825
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小嶋 哲人 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (40161913)
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研究分担者 |
高木 明 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (30135371)
松下 正 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (30314008)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アンチトロンビン・レシスタンス(ATR) / プロトロンビン / 遺伝子異常 / トロンビン / アンチトロンビン / Na+結合領域 / R593Lノックインマウス / 人工授精 |
研究実績の概要 |
我々は新しい血栓性素因・アンチトロンビン・レシスタンス(ATR)を示すプロトロンビン遺伝子異常(prothrombin Yukuhashi, p.R596L)を報告し(N Engl J Med. 2012)、さらに血漿検体によるATR検出法を確立して異なる変異(prothrombin Belgrade, p.R596Q)でのATR症例も同定している(J Thormb Haemost. 2013)。新規開発した血漿検体でのATR検出法により新たなATR症例で異なる変異も同定した。今年度は血漿検体でのATR検出・臨床検査法を用いてATRを検出できた新たな症例はなかった。 組換え技術を用いてトロンビンのアンチトロンビン結合部・Na+結合領域を構成するアミノ酸(596R, 599K, 540T, 541R, 592E)に一塩基置換によるミスセンス変異を導入して種々プロトロンビン変異体の安定発現株を作製したところ、各プロトロンビン変異体は野生型プロトロンビンと同様に細胞培養上清中に分泌されることが判明した。 R593L(ヒトR596Lに相当)ノックインマウスは、さらにCAG-Creリコンビナーゼ発現マウスと交配し、LoxP配列を含むNeo耐性遺伝子を除去することに成功した。これにより、完全なR593Lノックインマウス(R593Lへテロマウス)の樹立に成功した。しかし、R593Lヘテロマウスは数匹しか得られず、またmatingも失敗が続いたため、R593Lヘテロマウス(♂)より精子を取り出し、C58BL/6マウスの卵子と人工授精を行った。その結果、仔35匹のうち22匹のR593Lヘテロマウスを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先の研究成果として確立した血漿検体を用いた迅速ATR検出スクリーニング法を用い、未だ原因の特定に至っていない遺伝性血栓症症例における新たなATR血栓性素因の検出解析を継続している。 Na+結合領域を構成するアミノ酸(596R, 599K, 540T, 541R, 592E)に一塩基置換で生ずるミスセンス変異体発現ベクターを組換え技術にて作製したところ、それぞれ安定発現細胞株では野生型プロトロンビンと同様にその培養上清中に分泌されることが判明し、それぞれATR惹起性のスクリーニング解析予定である。 先の研究成果として得られたジーンターゲティング手法により作製したYukuhashi変異(R593Lプロトロンビン:ヒト分子の596Rはマウス分子593Rに相当)のキメラマウス交配により、ヘテロマウス(R593Lヘテロマウス)の作製に成功しており、今後その易血栓性を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、未だ原因特定に至っていない遺伝性血栓症におけるATR血栓性素因の有無について、血漿検体を用いてのATR検出法による検索解析を継続して行うとともに、ATR同定症例においてはその原因遺伝子変異の同定解析も行い、新たなATR遺伝子変異の同定を含めた血栓症発症分子病態の解明を継続して行う。 引き続き、トロンビン分子のNa+結合領域に位置しTAT複合体でのAT分子の264Eとの水素結合形成するプロトロンビン599Kならびに水分子を介してAT分子の264Eと結合する540T, 541R, 592Eにおいて、一塩基置換で生ずるミスセンス変異体をそれぞれ作製し、ATR検出検査や各組換えプロトロンビン分子のトロンビン生成能試験への影響を検討、ならびに各組換え体由来トロンビンのTAT形成能を解析し、ATRを示す変異体の同定解析を継続して行う。 引き続き、Yukuhashi変異ヘテロマウス(R593Lへテロマウス)を用い、その血漿検体でのATRを検証するとともに、種々血栓誘発刺激(FeCl3刺激や電気刺激法による下大静脈血栓形成、組織因子あるいは高分子ポリリン酸による肺塞栓形成)による血栓形成動態のin vivo解析を行い、野生型マウスとの比較検討を詳細に解析する。また、種々薬剤(未分画ヘパリン、低分子量へパリン、フォンダパリヌクス、抗Xa阻害剤、抗IIa阻害剤)の前投与における上述血栓形成刺激による血栓形成能を未治療群とで比較検討し、Yukuhashi変異マウスの抗凝固薬効効果判定の血栓性素因モデルマウスとしての有用性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度にわずかに(60,138円)残額が発生してしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度にわずかに残った60,138円は、H29年度の1,200,000円と合算して使用予定である。
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