研究課題/領域番号 |
16K09826
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柏木 浩和 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (10432535)
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研究分担者 |
冨山 佳昭 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (80252667)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インテグリン |
研究実績の概要 |
本年度は、我々が作製したαIIbβ3を恒常的に活性化する細胞内変異αIIb(R995W)ノックイン(KI)マウスに関する検討を中心に行った。 我々はホモKIマウスにおいて血小板機能の低下を示すデータを得ており、また流動条件下でのコラーゲン上での接着および凝集塊形成の低下や、FeCl3による血栓形成の著明な低下を認めた。これらの結果からαIIbβ3の恒常的活性化変異は血小板機能障害を生じることも明らかとなった。更に、KIマウスにおいては、巨大血小板減少症をきたしており、そのメカニズムに関する検討を行った。KIホモマウスにおいては、血小板数の低下とともに幼若な血小板である網状血小板産生の低下が認められた。そこで胎児肝細胞を用いてproplatelet形成に関する検討を行ったところ、ホモマウスでは野生型あるいはヘテロマウスと比べ、proplatelet形成の低下が認められた。更にトロンボポエチン投与後、あるいはGPIb抗体を用いた血小板減少からの回復において、ホモマウスでは血小板回復の遅延が認められた。以上の結果から、ホモマウスにおいては血小板産生能の低下が血小板減少の主因であることが示唆された。 また我々は小児期より強い出血症状を認める患者検体の検討から、本症例にCalDAG-GEFIの遺伝子異常が存在することを明らかにし、その強い出血症状の原因としてインテグリンαIIbβ3の活性化の速度が正常例と比べて、極めて低下していることが関与している可能性を示した。今回、更に新たに強い出血症状を認めた症例の解析から、本邦で初のkindlin3異常症を見いだした。Kindlin3の遺伝子変異を明らかにするとともに、αIIbβ3活性化シグナルの著明な障害が本例の強い出血症状の原因となっていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスに関する検討を概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も引き続き、αIIb(R995W)ノックイン(KI)マウスを用いた検討およびインテグリン活性化機構に関する解析を行う。 KIマウスにおいては、特に血小板産生障害の機構およびインテグリンαIIbβ3発現機構の障害に関する検討を中心に行うことを予定している。具体的にはKIマウスにおける骨髄および脾臓の巨核球数およびその形態、巨核球系コロニー形成能の検討を行う。またαIIbβ3発現の低下に関し、そのメカニズムに関する検討を行う。KIホモマウスにおいては巨核球においてはある程度のαIIbβ3の発現を認めるのに対し、血小板においてはαIIbβ3の発現に著明な低下が認められる。ProplateletにおけるαIIbβ3発現などを蛍光顕微鏡を用いて詳細に検討することにより、αIIbβ3発現低下のメカニズムに関する検討を進めることを予定している。 インテグリン活性化機構に関しては、CalDAG-GEFI欠損とKinlin-3欠損のinside-outにおける影響について更なる検討(流動条件下での接着能の違い)などに関する検討を加えることを予定している。特にKindlin-3はaIIbb3だけではなくb1インテグリンの活性化にも関与している可能性があるため、詳細な検討を加えていく予定である。
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