研究課題/領域番号 |
16K09829
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山之内 純 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (10423451)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 先天性血小板減少症 |
研究実績の概要 |
先天性血小板減少症は様々な遺伝子異常によって引き起こされる疾患であるが、その約半数は原因遺伝子が不明である。申請者は、常染色体優性遺伝形式をとっている先天性血小板減少症の一家系を見出した。その家系では血小板減少患者に動静脈血栓症が多発していたため、本家系の原因遺伝子は血小板減少と血栓性素因の両病態に関連していると考え、次世代シークエンス解析を行い、特定のGPR遺伝子に変異を見出した。まずは、血小板減少患者で血小板機能を検討した。血小板機能検査は、血小板凝集試験、リガンド結合能の測定(PAC1結合、フィブリノゲン結合)、血小板p-selectinの測定を行った。通常の生理的アゴニストによる血小板凝集能や顆粒蛋白発現には異常はないが、一部のアゴニストに対して血小板凝集が異常に亢進していた。次に、GPR遺伝子の変異がインテグリンαIIbβ3の活性化に及ぼす影響について検討した。GPR遺伝子の変異体を作成し、野生型と変異型をそれぞれインテグリンαIIbβ3が発現しているCHO細胞に遺伝子導入し、リガンド結合能(PAC1結合、フィブリノゲン結合)について検討するとともに、細胞接着能についても検討した。次に、当該GPR蛋白を認識するモノクローナル抗体はない。そこで、GPRは7回膜貫通型蛋白であり、血小板の機能解析(特にフローサイトメーター解析)に使用するためには、細胞外ドメインを認識する抗体が必要となる。そのため、現在、当該GPRを認識するモノクローナル抗体を作成し、血小板でGPR遺伝子が発現していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先天性血小板減少症患者の血小板機能解析はでき、in vitroでのGPR遺伝子の解析は進行中である。次年度以降に予定していたモノクローナル抗体の作製を先に進めたため、GPR遺伝子のsiRNAを使った検討はできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
GPR遺伝子 siRNA導入ES細胞およびGPR遺伝子変異導入ES細胞の遺伝子発現をコントロールES細胞と網羅的に比較する。次に、さまざまな細胞への分化誘導系を用いて、GPR遺伝子の細胞分化に関する役割を明らかにする。特に、巨核球系分化に関する影響をCD41やCD61の発現、巨核球系細胞の機能をフィブリノゲンへの結合などによってコントロールと比較する。 また、現在、GPR遺伝子変異を導入したマウスとGPR遺伝子野生型を導入したマウスは作製済みであり、血小板数に関しては、GPR遺伝子変異を導入したマウスでは野生型を導入したマウスに比べて約半分に減少していた。GPR遺伝子変異トランスジェニックマウスの表現系を形態学的に詳細に観察する。その結果によって、異常臓器を中心としてさらに研究計画を立案する。特に、血栓症が起こっているかどうかを詳細に検討する。血栓症がない場合でも、血栓形成機序についてマウス腸間膜動脈にFeCl3溶液を塗布することで血小板血栓形成を誘発し、血栓により血管が閉塞するまでの時間を測定することで、血管障害部位での血小板血栓形成能を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に計画していたsiRNAを用いた検討にはとりかかれておらず、そのため、予定していた試薬の購入などを次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に計画していたsiRNAを用いた検討に必要な試薬の購入にあてる予定である。
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