研究課題
本研究計画は、加齢とともに発症率が増加する骨髄系腫瘍である骨髄異形成症候群(MDS)を中心に、家族性MDS患者から樹立したiPS細胞、およびMDS患者の時系列サンプルを用い、経時的に遺伝子異常を解析してMDS発症に関与するエイジング因子を同定し、時間的・環境因子を加味した分子発症機序の解明を目指すものである。研究へのインフォームド・コンセントが得られた患者の骨髄液または末梢血を採取し、DNA・RNAおよびCD34陽性細胞RNAを抽出した。また同時に血液疾患に関する家族歴を詳細に聴取し、家族性造血器腫瘍家系が疑われる家系を新たに7家系見出した。家族内発生した造血器腫瘍病型や血小板減少の存在から、大半の家系ではRUNX1変異による「高率に白血病を発症する家族性血小板異常症FPD/AML」であると推測されたが、予測に反しRUNX1変異が同定されたのは1家系のみであった。いずれの症例においても、DDX41変異も認められなかったことから、さらなる変異解析を行い、未知の原因遺伝子変異によるものであることも念頭に次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子変異解析も視野に準備を進めている。さらに未発症(血小板減少のみ)の発端者の臨床経過についても引き続き慎重に観察を続けている。その一方で、分子病態解析のためにRUNX1変異を導入したマウスBMTモデルを作成し、発症に至る過程を観察・サンプリングして、これにかかわる遺伝子異常の解析を継続して行っている。
2: おおむね順調に進展している
この1年で約100例の骨髄系造血器腫瘍患者の検体を収集した。その中で、予想以上に家族性造血器腫瘍家系が多数存在することが判明し、また最も高頻度に認められるRUNX1変異が1家系しか同定されなかったことから、さらなる遺伝子変異解析を進めている。また分子病態の解明のためのマウス実験系は順調に進行しており、RUNX1変異を有する造血幹細胞がMDSなどの造血器腫瘍を発症していく過程の追跡調査を行っている。
引き続き症例を集積し、家族性造血器腫瘍家系を検索する。原因遺伝子異常の解析は、未知のものを念頭に次世代シークエンサーを用いた解析を行う。経時的な変化の追跡には、モデルマウスや家族性MDS症例から樹立したiPS細胞を分化させ、観察およびサンプリングを行い、進行に関与する遺伝子異常の同定を試みる。
残額が少額であり、必要な物品を購入できなかったため。
新年度の配分額と合算し、使用する。
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