研究課題
成人T細胞白血病 (ATL) はHTLV-1の感染によって引き起こされ、長期の潜伏期間を経て、クロナールエボルーションを起こし、最終的にモノクロナールなATL腫瘍となる。抗がん剤の奏功率は極めて悪い。我々はATLに関し、様々な癌で報告されている癌幹細胞の存在を仮定し、ATLのマウスモデルであるTaxTgマウスを用いてATL癌幹細胞 の同定に世界で初めて成功した。ヒトATLにおいても同様の幹細胞が存在している証拠がいくつかのグループから報告されている。そこで京都大学の松岡らによって作製されたHBZトランスジェニックマウス(HBZ-Tg)を用いて、ATL癌幹細胞の同定を試みた。HBZ-Tgの脾臓より分離したATL様細胞(Ht-48細胞)を用い、連続移植実験を実施した結果、移植前の細胞がレシピエントマウス上で再現できたことから、移植細胞中に幹細胞特性を有している細胞が存在することが明らかとなった。そこで、幹細胞分離に用いられているALDH酵素活性を指標としたALDEFLUOR染色及びHoechest33342染色性を利用したSide Population解析を実施した結果、ALDEFLUORではALDH酵素活性の高い細胞は認められなかったが、SP細胞は同定することに成功した。これらの細胞はVerapamilの添加で消失したことから、ATL癌幹細胞(ATLSCs: ATL stem cells)である可能性が示唆された。さらに、表面抗原解析を行い、ATLSCSの表現系の解析を行い、細胞手段を分取することが可能となった。今後は、 ATLSCsの分子基盤をもとに、ATLSCSの特性解析、機能解析を行うとともに、ATL癌幹細胞の発生・維持に必須な分子基盤を明らかにし、それらの分子基盤を元に、新規治療標的となる分子の探索を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は、HBZ-Tg由来の脾臓腫瘍細胞より、(1)幹細胞の存在をバイオアッセイで証明し、さらに(2)幹細胞特性を利用したATLSCs候補の同定、そして(3)表面抗原のスクリーニングにより、ATLSCsの細胞特性を明らかにすることが目的であった。まずHBZ-Tgの脾臓より分離したATL様細胞(Ht-48細胞)を用い、連続移植実験を実施した結果、移植前の細胞がレシピエントマウス上で再現できたことから、移植細胞中に幹細胞特性を有している細胞が存在することが明らかとなった(課題1)。そこで、幹細胞分離に用いられているALDH酵素活性を指標としたALDEFLUOR染色及びHoechest33342染色性を利用したSide Population解析を実施した結果、ALDEFLUORではALDH酵素活性の高い細胞は認められなかったが、SP細胞は同定することに成功した(課題2)。これらの細胞はVerapamilの添加で消失したことから、ATL癌幹細胞(ATLSCs: ATL stem cells)である可能性が示唆された。さらに、表面抗原解析を行い、ATLSCSの表現型を明らかにし、細胞を分取することが可能となった(課題3)。
今後は、 ATLSCsの分子基盤をもとに、ATLSCSの特性解析、機能解析を行うとともに、ATL癌幹細胞の発生・維持に必須な分子基盤を明らかにし、それらの分子基盤を元に、新規治療標的となる分子の探索を行う予定である。
年度末納品等にかかる支払いが平成29年度4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成28年度分についてはほぼ使用済である。
上記の通り
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
Oncotarget
巻: 7(32) ページ: 51027-51043
10.18632/oncotarget.10210.