研究実績の概要 |
平成30年度は同定したATL癌幹細胞(ATLSCs)候補において有意に高く発現している分子を複数同定した。それらに対するShRNAおよび中和抗体による阻害実験を行なった。その結果,in vitroにおいてc-kit中和抗体 (ACK2)による阻害によりATLSCsの自己複製能の低下が認められ,SCF存在下で正常と比較し,ATLSCs分画が1/4程度に減少していた。また,in vivoにおいてもc-kit中和抗体 (ACK2)による阻害によりATLSCsによるATL腫瘍の再構築能の低下が認められ,接種後のマウスの致死率の低下が確認された。また,c-kitのリガンドであるSCFのミュータントを有するマウスの一つ,Sl/Sldマウスをレシピエントとした移植実験においてもATL腫瘍の再構築能の低下が認められ,さらにATLSCs分画の著名な減少を認めたことから,c-kitがATLSCsの自己複製能に影響,および組織への定着と腫瘍の再構築に重要であることが示唆された。そこで,c-kitを指標として,マイクロアレイ解析によって同定されたATL癌幹細胞に高発現している遺伝子の内,複数遺伝子をセレクトし,ノックダウンによるin vitroの影響を検証したが,自己複製能をはじめ,大きな差は認められなかった。よって現時点では,c-kitがもっとも有望な標的分子であることが示唆され,今後の治療標的候補として有用であると考えられた。 最後にATLSCマーカーがヒトでも同様に発現しているかを明らかにする目的で,K562, Jurkat, KG-1, HEL, MT-2, SLB-1, HUT102, ED-1およびTL-om1の遺伝子発現解析した結果,ED-1でc-kitの高発現が認められ,ED-1を用いて詳細な解析を行うことが可能となった。
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