研究課題
研究代表者は、これまでに血液凝固、線溶系や血小板凝集の制御に関わる因子の遺伝子欠損マウスや変異マウスを樹立して解析を進めてきた。本研究では、これまでに得た知見を踏まえて、新たな血栓症モデルを用いた解析から、各分子や遺伝子変異が種々の血栓症病態に及ぼす影響を明らかにすると共に、血栓症治療の開発により適したモデルマウスを確立することを目的としている。前年度までに、凝固制御因子プロテインSのK196E変異と線溶因子プラスミノーゲンのA622T変異の二重変異マウスの血栓症、炎症症状の解析を進めた。また、血小板凝集制御因子ADAMTS13欠損マウスの侵襲性肺アスペルギルス症モデルを用いた解析および、FRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスの血小板イメージング解析を行い、ADAMTS13が肺の炎症時の自然免疫応答において過剰な好中球浸潤を抑制すること、血小板内の細胞外シグナル調節キナーゼが血栓形成の開始と維持に必須となること、プロテインキナーゼAが初期相においてのみ血栓形成を抑制することを明らかにした。最終年度である本年度は、日本人の先天性巨大血小板減少症患者に見られるインテグリンαIIb-R995W変異に相当するαIIb-R990W変異のノックインマウスを作製し、本変異の血小板機能への影響を解析した。この結果、本変異は血小板上のフィブリノーゲン受容体αIIbβ3の恒常的活性化を誘導するが、同時に血小板上のαIIbβ3発現量の劇的な低下をもたらし、血小板凝集不全を引き起こすことが判明した。また、ノックインマウスでは骨髄巨核球の数や倍数性は正常であったが、血小板前駆細胞の形成不全が認められ、これが主因となって血小板減少を来すことが明らかになった。
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オレオサイエンス
巻: 19 ページ: 89-92