研究課題
細胞株を用い、CRISPRにより導入した部位特異的な遺伝子切断がどのように修復されるかを検討した。CRISPRによる切断部位をPCR増幅し、アンプリコンをディープシークエンスにより解析した。多くは短い挿入欠失(Short InDel)で修復されたが、一部は長い(>50bp)挿入や欠失により修復されていた。挿入配列は他の染色体部位の配列が挿入されたり、テロメア配列(TTAGGG)nが挿入される場合があった。抗がん剤や放射線照射によるゲノム損傷を網羅的に解析するため、ヒト白血病細胞株をEtopocide、放射線照射で処理した上で、限界希釈により細胞を撒き、これらの処置を生き延びた娘細胞を1細胞由来のクローンとして樹立し、親株とともに全ゲノムシークエンス(WGS)を行った。構造変異、Short InDelに注目し、娘細胞特異的な変異を検討した。また、テロメラーゼによるゲノム修復が(TTAGGG)nの挿入配列で起きることから、リファレンスゲノムにはない(TTAGGG)n配列挿入は、腫瘍の体細胞変異である可能性があり、その定量値はゲノム損傷修復を繰り返した後の再発難治性白血病で高い可能性がある。急性骨髄性白血病においてFlt3-ITD変異は予後不良のマーカーである。Flt3-ITDは白血病発症の後期に入る変異と考えられており、1症例中に複数の種類のFlt3-ITDクローンが検出されることがある。臨床検体で、Flt3-ITD変異部位をPCR増幅し、ディープシークエンスを行った。各症例から複数のFlt3-ITDが検出されるとともに、複数の欠失変異クローンが検出された。これは同部位が繰り返しゲノム損傷を受けやすい部位で、個々の細胞で別々の修復が起きていることを示唆しており、"Flt3バリエーション"はゲノム損傷の代理マーカーとなる可能性がある。
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