研究課題/領域番号 |
16K09837
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
奈良 美保 秋田大学, 医学部, 助教 (10649479)
|
研究分担者 |
田川 博之 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (30373492)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 多発性骨髄腫 / Side population / 低酸素 / HMOX1 |
研究実績の概要 |
ベルケイドはSide Population分画に有効であることを以前発表したが(NARA PLoS ONE)、低酸素下では酸化ストレス防御遺伝子が活性化してSP分画にベルケイドが効きづらくなる。ベルケイドを細胞株に投与すると、酸化ストレスとHMOX1の発現が上昇するが、このHMOX1は酸化ストレスから防御する酵素としての働きをもつ。 我々はまず、骨髄腫細胞株を用いて低酸素下でのSP,MPを純化分離することに成功した。その後骨髄腫細胞株SP,MPについて(8226, KMS11)網羅的遺伝子解析を行ったところ、SP>MPである遺伝子がわかり、代表的遺伝子として、HMOX1, BACH2, DUX4を同定した。これらの遺伝子はすべて、酸化ストレスに関与している遺伝子である。 正常酸素、低酸素でのSP,MPのそれぞれのRNAと蛋白をとり(8226, KMS11)、これらコーディング遺伝子について解析を行って細胞株を増やして解析し、HMOX1のノックダウンを行いSPの低酸素下での生存曲線を描いた。そして低酸素SPで特異的に高発現する遺伝子として上記遺伝子群の中のHMOX1を同定した。HMOX1はヘムオキシゲナーゼ1をコードする遺伝子であり、ヘムオキシゲナーゼのノックダウンを細胞株で行い、低酸素または再酸素化による酸化ストレスによるアポトーシスが変動するか検討した。この結果では少なくてもアポトーシスは起こさないことがわかったが、ヘムオキシゲナーゼがなんらかのストレス反応に関与していると我々は考えており、次に、免疫不全マウスへの皮下注射または骨髄移植を行い、造腫瘍性が変動するか検討を開始している。 この研究での結果は、骨髄腫において再酸素化と酸化ストレスを標的とした治療戦略はこれまで検討されておらず、新規治療法となり得ると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HMOX1はヘムオキシゲナーゼ1をコードする遺伝子であり、ヘムオキシゲナーゼは細胞が酸化ストレスを受けた時に抗アポトーシス作用を発揮する酵素である。骨髄腫細胞において、骨髄低酸素ニッチから血管をへて別の骨髄にホーミングするときに再酸素化を受けるが、この時に酸化ストレスが高まると予想し実験を進めてきた。しかしながらヘムオキシゲナーゼのノックダウンは細胞株で成功したものの、低酸素または再酸素化による酸化ストレスによるアポトーシスが変動することを期待したが、アポトーシスは起こさないことがわかったため、アポトーシス以外の経路を見出す次なる研究を行う必要がある現在NOGマウスを使用した研究を行っているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
ベルケイドを細胞株に投与すると、酸化ストレスとHMOX1の発現が上昇するが、このHMOX1は酸化ストレスから防御する酵素としての働きをもつことがわかっている。骨髄腫において再酸素化と酸化ストレスを標的とした治療戦略はこれまで検討されておらず、新規治療法となり得ると考えられる。HMOX1がアポトーシスに関連していないことはノックダウンから証明したが、今後どのように関与しているのか、具体的には免疫不全マウスへの皮下注射または骨髄移植を行い、造腫瘍性が変動するか検討する予定である。また、万が一HMOX1で期待する結果が見出だせなかった場合には、低酸素下の遺伝子発現解析でSP>MPであったHMOX1以外のBACH2, DUX4で検討することを予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
PCRやSP解析でほぼ交付額は使用しており、余りとして生じた6835円は少額であるため、チップやチューブなどの雑費として使用することといたします。
|