研究課題/領域番号 |
16K09838
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
渡部 敦 秋田大学, 医学部, 助教 (80567157)
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研究分担者 |
田川 博之 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30373492)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ファージディスプレイ / T細胞性リンパ腫 / 抗体 |
研究実績の概要 |
本研究は、がん細胞において発現が重要とされる細胞膜レセプターに対する抗体を作成し、その結合力や抗腫瘍作用についての検討を行い、治療の可能性を探るものである。研究代表者は2013~2015年にかけて留学先のカナダ・サスカチュワン大学において、ファージディスプレイライブラリの作成に携わり、細胞膜レセプターに対する新規抗体の開発を行なってきた。これは、ウイルスの一種であるファージに遺伝子組換え技術を用いて抗体蛋白を発現させるシステムであり、従来の動物を用いたシステムと異なり大腸菌を用いることで研究室内の小規模な実験設備で簡便に行えるという特徴を有している。M13ファージミドに、Kunkel法を用いた塩基配列変異を用いることで、ヒトが本来有していると言われている抗体多様性の10E8クローンを大きく上回るサイズのライブラリを作成し、標的抗原に対する特異的な結合を示すクローンを選別するシステムを用いている。このファージディスプレイライブラリを用いて、標的とする抗原レセプター蛋白を発現させた細胞に対する特異的な結合力を示すクローンの選別を行っている。現在、セレクションに用いている標的レセプター蛋白は、T細胞性リンパ腫において強発現しており治療の標的となりうる可能性を持つケモカインレセプターを候補しており、数種類の標的候補について検討を続けている。今後、これらの選別により得られた候補から抗体のアミノ酸配列を決定し、大腸菌を利用した蛋白発現システムによる抗体断片の作成へと移行、より強い結合力を持つ抗体を獲得する予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H28年度の予定として、標的とする蛋白を発現させた細胞を用いて、候補となるファージクローンを選別し配列を解析する事が挙げられている。セレクションの成否を分ける部分として、非特異的な結合を示すクローンをいかに排除するかが重要であり、選別方法の条件を変えながら、より強力な結合を示す候補を選別中である。次年度以降の機能解析で有望な候補を獲得するためにも、選別方法の改善を加えつつ、より抗腫瘍効果が期待できる標的レセプターの同定のために、抗腫瘍薬を使用したスクリーニングを加え、セレクションの試行を繰り返している。対象範囲拡大に伴い進捗状況として当初の計画よりやや遅れてはいるが、遂行には支障のない範囲である。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度の研究予定として、獲得されたファージクローンの候補配列を用いてより強力な結合力を有する抗体断片を、遺伝子組換え技術を用いて大腸菌を利用し作成することが挙げられる。複数候補が非特異的結合しか示さない可能性も残されており克服すべき課題としてあげられるが、再度ファージファイブラリの選別に戻って候補を得ることが可能であり、セレクション効率を上げるため、選別方法の見直し、あるいは標的蛋白の見直しなど必要に応じて対応を行うことができる。大腸菌を用いた本システムでは、有望な候補を得られるまで試行回数を比較的容易に増やすことが可能であるという利点を有している。得られた配列を用いた抗体作成と機能解析など次年度の計画へつなげる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
セレクションの結果から得られたファージの DNA 配列の解析費用として予算を組んでいましたが、セレクションの試行回数を増やしたため、解析がH29年度にずれ込んだために差額が発生しました。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度にずれ込んだ DNA 解析のため、セレクション完了後に使用する予定です。研究内容に変更はないため、使用予定額について変更はありません。
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