研究実績の概要 |
急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群などの骨髄系腫瘍において、7番染色体の欠損は高頻度に認められる異常である。研究者は7番染色体の高頻度欠失領域に位置するスプライシング装置の構成分子であるLUC7L2の機能不全に起因する病態の解明を取り組むべく、2種類の白血病細胞株(HL60, K562)を用いてLUC7L2の低発現細胞株(発現率15~60%、コントロール比)を作成した(HL60/shLUC7L, K562/shLUC7L2)。LUC7L2低発現細胞株では、細胞倍加時間の延長を認め、細胞同士が接着する形態異常を認めた。さらにK562/shLUC7L2細胞ではアポトーシス誘導タンパクであるBimの発現低下を認めた。LUC7L2の発現低下に伴うスプライシングの異常をこれらの細胞株で検討したところ、両細胞ともに、エクソンスキッピングを最も高頻度に認めた。両細胞に共通して認められたスプライシングの異常として、BCLAF1、HMGN1、LETMD1の遺伝子などを含む8遺伝子においてスプライシングの異常が認められた。なかでもHMGN1のスプライシングの異常は、相互排他的(mutually exclusive exon)なものであった。HMGN1の発現は正常骨髄に多く認められており、細胞増殖および腫瘍細胞の進展に深く関わる分子であることから、本遺伝子のスプライシングの異常に伴う発現変化が腫瘍化に関わる候補分子として推測された。今後はこれらの分子の異なるスプライシングの結果が造血細胞に及ぼす影響について検討を加えていく。
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