研究課題/領域番号 |
16K09845
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石川 裕一 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80721092)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CALM / AML / エンドサイトーシス / 受容体型チロシンキナーゼ |
研究実績の概要 |
急性骨髄球性白血病(AML)と診断された患者検体81例を用いてトランスフェリンレセプター(TFR)、 CALM、EPS15のmRNA発現について検討を行ったところ、全ての検体においてTFR、CALM、EPS15の発現が認められ、これらには正の相関が認められた。また、CALM発現量のAMLのFAB分類による検討では一部の単球系のAMLにおいて高発現が認められた。一方で、ウエスタンブロットによる蛋白発現の検討で、ほとんど蛋白レベルでの発現が見られなかった急性前骨髄球性白血病(APL)においても他のAML同様のmRNA発現が認められ、翻訳後修飾等による蛋白発現レベルの調節機構の関与が示唆された。これらより、細胞増殖に必須なTFRの発現とCALMおよびEPS15mRNA発現の密接な関係が示された。 AMLで高頻度に認められる活性型変異レセプターチロシンキナーゼ(RTK)と野生型RTKへのリガンド刺激やチロシンキナーゼ阻害剤の細胞局在などへ与える影響について検討を行った。FLT3、KITの変異型RTKを発現した細胞株では低濃度のチロシンキナーゼ阻害剤への暴露により、変異型RTKの細胞表面の発現増加とともに細胞増殖の亢進が認められことを見いだした。さらに、これらRTKに対するリガンド刺激との併用により、更なる変異型RTKの自己リン酸化の増強及び下流シグナルのリン酸化が認められた。一方で、野生型RTK発現細胞での検討では、チロシンキナーゼによる野生型RTKの細胞表面の発現亢進は認められなかった。これらの結果は、チロシンキナーゼ阻害剤により活性型変異RTK特異的な細胞表面への発現亢進、すなわちエンドサイトーシスの阻害、およびリガンド刺激による治療抵抗性の可能性が示唆された。チロシンキナーゼ阻害剤と変異型RTK特異的なエンドサイトーシスの阻害について更なる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者由来AML細胞へのレンチウィルスによるCALMを標的とするShRNA導入が困難であり、実験条件の至適化に時間を要した。今後は細胞株を用いた検討および、患者由来AML細胞にJasplakinolideなどエンドサイトーシスを阻害する化合物を添加することにより、細胞におけるエンドサイトーシス阻害の影響の検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
白血病発症および進展に重要な役割が報告されているレセプター型チロシンキナーゼ(RTK)とクラスリン依存性エンドサイトーシスの関わりを明らかにする事を目的に、野生型RTK分子および、FLT3、KITの活性型変異RTK分子発現細胞を用いて、リガンド依存性のレセプターの内在化とのRTK変異、クラスリン依存性エンドサイトーシスとの関係について検討を行う。また、CALM欠損細胞やJapslakinolide処理時におけるRTKの細胞内の局在変化についてエンドソームマーカーEEA1などのオルガネラ特異的マーカーを使用して観察し、受容体のレセプター内在化、トラッキングに与える影響について正常RTK、活性型RTKについて比較検討し、また、これら細胞増殖に関わる分子異常と細胞増殖に必須であるトランスフェリンレセプター(TFR)の発現および、そのクラスリン依存性エンドサイトーシスへの影響についても検証を行う。 FLT3、KIT変異陽性ヒト白血病細胞を用いて活性型RTKを標的としたキナーゼ阻害剤の細胞増殖抑制、シグナル抑制効果に対するCALM欠損、Japslakinolide処理における影響をin vitro、in vivoで検討し、エンドサイトーシスとRTK阻害剤の関わりについて明らかにする。 ヒト白血病細胞でCALM発現とエンドサイトーシス阻害薬の細胞増殖抑制もしくは受容体内在化阻害効果について検討し、ヒト白血病細胞においてCALM、エンドサイトーシスを治療標的とする事の妥当性について検証し、化合物スクリーニングに向けた、スクリーニングシステムの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト白血病細胞へのレンチウィルス導入の実験系の確立に時間を要したため、引き続き行う予定であった、マウス生体内での研究の計画遅延により実験動物および抗体の購入費用が予定額を下回った。同計画を本年度に行う体制が整ったため、予定されていた実験計画に使用する物品の購入に使用する。
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