研究実績の概要 |
変異CALRがTPOR-JAK2-STAT5経路を活性化するメカニズムの解明
Wtあるいはdel-CALRを導入したBa/F3-TPOR細胞を用いて、後者のみで増殖を抑制するケミカルインヒビターを同定することにより、そのメカニズムを探った。 ケミカルインヒビターとして文科省標準阻害剤キット(約400種類)を用いた。sanguinarine, dequaliniumなどがスクリーニング実験では差が見られたが、種々の濃度でvalidationをすると有意差は認めなかった。
研究のまとめとして、骨髄増殖性腫瘍(MPN)に特徴的な遺伝子異常として、Calreticulin(CALR)遺伝子変異が新たに同定されたが、その発症におけるメカニズムは不明であった。我々の研究により、変異CALRによるJAK-STAT経路活性化にはTPORの存在が必須であることが判明した。CALRはシャペロンタンパクであり、直接の機能阻害は困難と考えられるが、この新知見により、変異CALR 陽性MPNの治療として現行のJAK阻害剤だけでなく、TPORの機能阻害によっても治療効果が期待できることが判明した。現在MPNに対する治療薬の効果は十分でないが、これにより症状や予後の改善につながる可能性がある。
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