我々は、これまでの研究と東北6県および北海道地区のPNH症例(登録50例)を対象とした凝固異常、造血状態異常および自己免疫異常の病態調査を行っており、PNHでこれまで考えられていた溶血以外の因子による血栓発症機序、PNHクローンの拡大には、腫瘍性増殖や免疫学的な攻撃を回避する機序、免疫学的異常や造血障害による血球減少が複雑に絡み合っている知見を得た。本研究では、すでに臨床病態が明らかなPNH症例を対象として、網羅的遺伝子解析を行いPNHの遺伝子異常を明らかにするとともに、種々の病態を示すPNH症例由来のiPS細胞を作成し、PNH病態モデルを作成することを目的に開始された。 遺伝子解析は共同研究で進行中であり、本研究期間中は、PNH症例から得た造血細胞をもとにiPS細胞の作製に主眼を置くこととした。 現在も、健常人の造血細胞からの作製・分化傾向の確認などの試行中である。我々が得た細胞は、元となる細胞の性質が残存しているようで、一定の各造血細胞への分化傾向があり、不完全である。PNHの病態の形質には、赤芽球、血小板(巨核球)、顆粒球、単球、各種リンパ球が、単独あるいは相互に関連している治験があるので、一定の分化傾向がない性質をもつiPS細胞を作成することが必要であるからである。今後も研究を進め、高品質のiPS細胞の作製を継続するつもりである。
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